ある夏の暑い日、旅の若者三人連れが川越のお寺で一休みしていました。
やがて、一人の若者が厠(かわや)のためにお寺の裏庭へ行きました。若者が用を足そうとすると、井戸の横の石の上に白い蛇がいて、若者を睨みつけていました。怒った若者が石をぶつけても、白い蛇はそれにもめげずに石にしがみ付いていました。
その頃、寺の縁側に座っていた和尚さんの頭に、どこからか石が飛んでぶつかりました。次々に石が飛んでくるので、和尚さんの頭は血だらけになりました。縁側にいた二人の若者たちは投石の犯人だと疑われ、すっかり困っていた所に厠の若者が戻ってきました。
実はこの和尚さんは、石の下に長年かかって貯めた小判を隠していたのです。それを誰かに盗まれないかといつも気になり、その思いが和尚さんも気が付かないうちに蛇の姿となっていたのです。厠の若者から白い蛇の話を聞いた和尚さんは、少し恥ずかしそうに小判の事を打ち明けました。
あさましい心を恥じた和尚さんは、小判の入っていた茶碗を井戸に投げ捨て、貯めた七両の小判を三人の若者に譲りました。そして、和尚さんはますます精進を続け、旅の若者たちは楽しい旅を続けました。
(紅子 2011-12-14 2:56)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 川崎大治(童心社刊)より |
出典詳細 | 日本のふしぎ話(川崎大治 民話選3),川崎大治,童心社,1971年3月20日,原題「石の下のちゃわん」 |
場所について | 江戸は神田 |
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