昔ある所に、両親に食わせてもらって暮らす怠け者の若者がいた。いつしか両親が流行り病で死んでしまい、困った若者はお堂の仏様に「オラをただで置いてくれて、うまいものを腹一杯食わせてくれてるような所を世話してくれ」とお願いした。
すると仏様は「裏の川を上へと歩いていくと大きな屋敷が見つかる。そこの主人がお前の望みを叶えてくれる」と言った。若者はお告げの通りに川を上っていくと大きな屋敷があって、そこでは若者の望み通りの暮らしをさせてくれた。
一ヶ月ほど過ごしたある夜のこと、壁の向こうから「ポタポタ、ポタポタ」と奇妙な音が聞こえてきた。ここに来る途中に拾っていた箸で壁に穴をあけて覗いて見ると、主人が人を縛って宙吊りにして、火にかけて油をしぼっている最中だった。さらに主人は「明日はあの若者の油をしぼってやろう」と言っていた。
これを聞いた若者は、屋敷から一目散に逃げ出した。走っていた途中で石につまづき気がつくと、そこはお堂の軒下だった。これまでの事は夢だったのか?とも思ったが、手にはあの時の箸があった。それからの若者は一度死んだつもりで汗水流して働いて、自分の作ったもので腹一杯食えるようになった。
(紅子 2011-11-30 23:51)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 斎藤了一(鎌倉書房刊)より |
出典詳細 | 父母が語る日本の民話(上巻),大川悦生,鎌倉書房,1978年4月20日,原題「寝てて食われる話」 |
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