No.0694
ゆきむすめ
雪むすめ
高ヒット
放送回:0435-B  放送日:1984年03月17日(昭和59年03月17日)
演出:芝山努  文芸:沖島勲  美術:木葉井悦子  作画:加藤鏡子
山形県 ) 21084hit
あらすじ

むかし北国の山奥に、樵の吉助(きすけ)爺さんと婆さんが住んでおった。

山の麓はもう春だというのに、山奥はまだ雪深いある夜のこと。爺さんと婆さんは囲炉裏の前で、麓の村へ嫁に行った娘の話をしておった。娘は毎年春になったら、必ず二人に会いに来るという約束じゃったので、二人は春が来るのをとても楽しみにしておった。

すると「こんばんは」という声が聞こえてきた。婆さんが戸口を開けてみると、自分の娘にとても良く似た娘が立っておった。婆さんは娘の氷のように冷たい手を取り、部屋の中に招き入れた。その途端、荒れ狂っていた吹雪はぴたっと止んだ。

娘は「私はもっと北の国へ行かなければならないのです」と言ったきり、どんな質問にも何も答えなかった。ただ、爺さんと婆さんが自分たちの娘の話を聞かせると、娘の目から涙が一粒こぼれ、手の上で粉雪になって散った。

爺さんが茹で栗や芋粥を勧めても、娘はそれを断り「ありがとうございました。私がここにいると娘さんは帰ってこられません。私がいると春がやって来ないのです」と言うた。爺さんが娘を止めようとその手を取ると、まだ氷のように冷たかったそうな。

娘が立ち上がると、今まで収まっていた吹雪がまた荒れだした。囲炉裏の火が消え、冷たい風に乗って雪が家の中に入ってきた。そうして娘の体は見る間に雪に変わり、煙のようになって天井の煙出しからスゥッと消えてしもうた。

あれは夢か、狐か狸の仕業かと驚く爺さんに、婆さんは「あれは雪娘じゃ。昔から雪娘を火にあてると北風が迎えに来るという。それに雪娘の手は氷のように冷たくて、触ると凍え死ぬそうじゃよ」と言うたそうな。

爺さんと婆さんは娘の手に触っても死なんかったし、二人は何となくあの娘が自分の娘のような気がして、涙をこぼしたそうな。そうして爺さんは、明日は娘が訪ねてくるような気がすると言って婆さんを励ました。

翌日は昨夜とはうって変わった暖かい日じゃった。「婆さん、娘がやってきたぞ~!」日に照らされた庭に爺さんの声が明るく響いておった。

(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-9-17 13:11 )


ナレーション常田富士男
出典東北農山漁村文化協会(未来社刊)より
出典詳細みちのくの民話(日本の民話 別1巻),東北農山漁村文化協会,未来社,1956年06月10日,原題「雪むすめ」,話者「山形県上山市上山小学校教諭の萩生田憲夫」
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※掲載情報は 2012/9/17 20:19 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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カケス  投稿日時 2020/8/23 13:02
雪女のお話ですが、誰かが襲われるわけでもなく、こわい思いをするわけでもなく
淡々と進むお話です。
「盛り上がりに欠ける」という意見もあるかもしれませんが。北国の雪の夜にいろりばたで家族が体を寄せ合いながら聞く話としては、よいのではないでしょうか?
雪むすめも、このおじいさんとおばあさんのような両親が欲しかったのかもしれない、
普通の人間のように体を寄せ合って家族のきずなを確かめないたかったのかなと思います。
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