昔、高知の山奥で、うどんの屋台(夜泣きうどん)を引いてくる人の良い爺さんがいた。鈴をチリンチリンと鳴らしながらやってくる屋台は、かっちゃんという若者が常連だった。
ある夜、この辺では見かけない美人の女将さん風の人がうどんを食べにやってきた。次の夜もまた次の夜も、ここら辺では見かけない客がやってきて、うどんを3杯も4杯もおかわりして帰って行った。しかし見慣れない客が払ったお金は、全て翌日には木の葉になっていた。
うどん屋の爺さんがかわいそうだと思ったかっちゃんは、ある夜、怪しい客の着物のスソに火を付けた。すると思った通り、熱さに驚いた客は、元のタヌキの姿に戻った。タヌキは、かっちゃんから強烈な一撃をくらい、瀕死の状態で逃げて行った。それからは、もうお金が木の葉になる事もなかった。
翌年になり、また夜泣うどんがやってくる季節となった。だが、屋台の鈴の音ではない音が聞こえてくる。変だと思ったかっちゃんが、こっそり外を見ると、6匹の子ダヌキたちが鈴の音を真似て鳴いているのだった。
母ダヌキが毎晩、夜泣うどんに通っていたため、子ダヌキたちも鈴の音を覚えたのだろう。死んだ母狸を偲んでいる子ダヌキ達を見て、かわいそうな事をしたと、かっちゃんも泣いた。
(紅子 2011-8-27 9:49)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 高知のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 高知のむかし話(各県のむかし話),土佐教育研究会国語部,日本標準,1976年09月01日,原題「夜なきうどん」,採録地「高知市潮江」,話者「朝倉慶重」,再話「外京華子」 |
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