昔、山梨県韮崎(にらさき)の下条(げじょう)というところに、五作とお静という若い馬方夫婦が暮らしていました。
ある年の暮れ、町から帰る途中で、馬のしっぽに12~13歳くらいの男の子がしがみついている事に気が付きました。五作は大切な馬にいたずらされていると思って、竹棒で子供を叩いて追い払いました。
家に帰り着いた五作は、馬のしっぽに「子供の腕らしき物」がぶら下がっているのを見つけました。五作は、気味が悪いと思いましたが、腕を土間に置いてその夜は眠りにつきました。
夜も透けた頃、家の外から「おっちゃん、腕を返してくれ」と、子供の声が聞こえてきました。子供だと思っていたのは、釜無川(かまなしがわ)に住むという河童でした。泣きながら謝る河童をかわいそうに思った五作は、腕を返してやることにしました。
河童は腕を返してもらって嬉しかったのか、取れた腕すら元通りに接ぐ事ができる「妙薬」の作り方を教えてくれました。この薬は、人間の傷にもよく効くため「下条の傷薬」と有名になり、いつまでも人々に親しまれましたとさ。
(紅子 2013-10-7 0:41)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 甲州の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 甲州の伝説(日本の伝説10),土橋治重,角川書店,1976年9年10日,原題「河童のきず薬」 |
場所について | 山梨県韮崎(にらさき)の下条(地図は適当) |
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