昔、今の福島県相馬の七不思議のひとつに「酒田のから堤」というものがあった。
この池にはカニとウナギが住んでおった。互いの夫婦は住む穴もとなり同士で、始終行き来するなど仲良くしておった。赤ちゃんが生まれれば、お互いにお祝いし合った。
それから何年か経ち、ウナギもカニも以前のような付き合いをしなくなっておった。数が増えたもんで、住むところも食べるものも精一杯。ウナギはカニの掘った穴を拝借するようになり、カニはカニでウナギの食べ物を失敬するようになっておった。こうして両者の仲はだんだん悪くなっていった。
そんなある日、全くの偶然で、カニのハサミにウナギの尻尾が挟まり、あまりの痛さに思いっきり振ったウナギの尻尾はカニを吹っ飛ばしてしもうた。お互いに怒り、カニとウナギの戦争が始まった。長い戦いの末、ウナギは全滅しちまった。それからはカニの天下となり、堤は穴だらけになっていった。
それからというもの、堤には水が溜まらなくなり、しまいにはカニも生きていけなくなった。堤に水が溜まらない原因を土地の人はいろいろ噂したが、本当はカニが開けた穴が原因だったのじゃ。
(投稿者: もげお 投稿日時 2012-3-31 11:09 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 三星賢二(偕成社刊)より |
出典詳細 | 福島県の民話(ふるさとの民話10),日本児童文学者協会,偕成社,1978年12月,原題「酒田のから堤」,採録地「双葉郡」,再話「三星賢二」 |
備考 | 相馬の七不思議 |
場所について | 福島県双葉郡浪江町酒田(地図は適当) |
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