昔、ある村に大金持ちの大きな屋敷がありました。この屋敷に住む夫婦は、大勢の召使いにかしずかれ、何不自由なく暮らしていました。この召使いの中に、子供の時から奉公しているお房というよく働く女がいました。
ある年の大晦日、この村では年越しの晩だけは昔の苦労を忘れぬために麦飯を食べるしきたりがありました。お房はしきたりどおり麦飯を用意しましたが、すっかり贅沢な食事に慣れてしまっていた夫婦は、何かと理由を付けて食べませんでした。お房がたしなめると、夫婦は「生意気にも主人に意見するのか!」と怒りだし、お房をクビにしてしまいました。
長い間この屋敷で働いてきたお房にはどこにも行くあてがなかったので、今夜は馬小屋で寝て、明日出ていくことにしました。この様子をずっと見ていた麦の神様は怒り、自分も屋敷を出ていくことにしました。すると米の神様も一緒に出ていくと言い出し、それに賛同した金の神様も出ていくことになりました。
翌朝、お房が屋敷から出ていこうと門を一歩またぐと、釜や水がめや瓦や柱たちが騒ぎだしました。「お房が出ていくならおれたちも出ていく」と口々に言って、お房の歩く後について行ってしまいました。屋敷はすっかり形がなくなり、そうとも知らない金持ち夫婦は、まだ雪の上で寝ていましたとさ。
(紅子※講談社の決定版100より 2011-12-30 4:29)
ナレーション | 未見のため不明 |
出典 | クレジット不明 |
講談社の300より | 書籍によると「愛媛県のお話」 |
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