昔、高知県須崎の池の内というところに、大善寺(だいぜんじ)というお寺に、とても食い意地の張った和尚さんがおりました。
寺の池に朝晩やってくる鴨を食べたくて食べたくて、ある日、池の鴨全部に縄をくくりつけました。すると驚いた鴨たちが一斉に空に飛び上がり、和尚さんをぶら下げたまま、七日七晩飛び続けました。運良く雲の上にぽっかり頭をのぞかせていた大きな杉の木を見つけ、和尚さんは杉の木を伝って下へ降りる事にしました。
しかしこの杉は、大阪の天王寺という名高い寺の大杉だったので、昼夜続けて降りても一向に地上へたどり着きませんでした。七日たった時、とうとう伝わって降りる枝が一本もなくなってしまいましたが、地上はまだまだはるか下にありました。
困った和尚さんが地上に向かって大きな声で助けを呼ぶと、天王寺のお坊さん達が町中の布団を集めてくれました。杉の木の下に布団を敷き詰め、ここに飛び下りろと声をかけましたが、とても怖くて飛び下る事ができません。そこで、お坊さん達は町中の綿を集めて、布団の上に重ねました。
和尚さんはようやく飛び降りる決心をしたものの、やはり怖いので念仏を唱えて心の準備をしていました。そこへ雲に乗った雷様の子どもがやって来て、和尚さんをでんでん太鼓で叩いたので、和尚さまは真っ逆さまに落ちていきました。無事に綿の真ん中に落ちましたが、ものすごい勢いだったので、布団の端を持っていたお坊さん達が真ん中に引き寄せられて、お互いの頭がぶつかってしまいました。その時に出た火花が布団に燃え移り、やがて大火となり、天王寺も大杉もみんな焼き尽くす大火事になってしまいました。
その灰の中から、大きなカブが生えてきました。カブはどんどん大きくなって、今の「天王寺カブ」となりました。
(紅子 2012-1-20 23:51)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 高知県 |
場所について | 大善寺(須崎市) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第092巻(発刊日:1988年1月) |
講談社の300より | 書籍によると「高知県のお話」 |
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