昔、ある所に大変仲の良い太郎、次郎、三郎という3人兄弟がいた。この兄弟、家が裕福なもので、もう働く年頃になっても、まだ山や川で毎日遊んでいた。
そんな兄弟を見かねた親父さんは、ある日3人にお説教をして、3年間の修行の旅に出るように言い聞かせた。すると心配する母親をよそに、3人兄弟ともこの話に乗り気で、太郎は3年後には侍の大将になると言い、次郎は日本一の大商人になると言った。ただ、三郎だけは「お、俺も日本一の何かになる。」と言うのみだった。
こうして3兄弟は、翌日意気揚々と家を出た。さて、3人がしばらく歩いて行くと、道が3つに分かれる辻に出くわした。ちょうどいい潮時だということで、太郎は真ん中の道、次郎は右の道、三郎は左の道をそれぞれ行くことにした。そして3年たったら、またここで合おうと約束して別れた。
そして季節は巡り、3年の歳月が過ぎた。真ん中の道からは、太郎が家来を大勢引きつれ、侍の大将として戻って来る。そして右の道からは、これまた使用人を大勢連れて大商人になった次郎が戻って来た。一方、三郎だけは出発した時と変わらない格好で左の道から帰って来た。
3人兄弟が家に帰ると、立派になった太郎、次郎を見て、親父さんも大層喜んだ。そして親父さんが、三郎は何になったかと聞くと、三郎は「俺は、日本一の泥棒になった。」と答えるのだった。親父さんは、馬鹿なことを言うなと怒ったが、三郎はその証拠に親父さんが大切にしている金の香炉を盗み出してみせると言う。そこで親父さんは、厳重に家の戸締りをすると、三郎を外に出した。
実は三郎、泥棒になったというのは嘘で、3年間山んばの世話をしていたのだ。そして、三郎はそのお礼に三郎の言うことなら何でも聞く木ぼっこ(こけし人形)を山んばからもらっていた。そこで三郎は、木ぼっこを屋敷の中に投げ入れた。すると木ぼっこは、見事に蔵から金の香炉を持って来た。
その後、3人兄弟は力をあわせたので家は益々栄え、三郎の木ぼっこは家宝としていつまでも大事にまつられたそうだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-1-21 12:48)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岩手県 |
DVD情報 | DVD-BOX第5集(DVD第22巻) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第071巻(発刊日:1987年2月) |
講談社の300より | 書籍によると「岩手県のお話」 |
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