昔、ある山すその村に、とても魚釣りが好きなお爺さんが住んでいました。
ある日、大漁の魚を入れたびくを持って帰り道の途中で、藪の中から狐が声をかけてきました。「子供が十匹も生まれて腹が減って困っているから、魚を恵んでくれ」はじめはしぶったお爺さんも、狐の「お礼に千両箱を授けるから」という必死のお願いに、採れた魚を全部あげました。
魚を受け取った狐は、さらなるお願いとして「全家族分の魚と油揚げの入った魚飯を、あさってまでに持ってきてほしい」と言うので、千両箱が欲しくてたまらなかったお爺さんは、喜んで承諾しました。
約束の日、お爺さんは約束の魚飯を持って、狐の住む原っぱへやってきました。すると狐が待っていて、千両箱を手に入れる方法をお爺さんに説明しました。「明日の晩、大金持ちの家の番頭さんが千両箱を持ってここを通りかかる。自分は侍に化けて番頭さんとケンカするから、そこへお坊さんに化けたお爺さんが割って入り、お詫びのために千両箱を受け取るように仕向けましょう」というものだった。
お爺さんは、もう千両箱の事で頭がいっぱいになって、翌晩、さっそくお坊さんの衣装を付けて再び原っぱへやってきました。すると狐が言った通り、千両箱をもった番頭さんが通りかかり、計画通りまんまと千両箱を巻き上げる事に成功しました。千両箱をもらったお爺さんは、もう有頂天で家に帰り、その晩は千両箱を抱いたまま眠りました。
翌朝、千両箱はハスの葉に包まれた木の葉に変わっていて、お爺さんはその山に埋もれて寝ていました。昨夜の番頭さんは狐の女房が化けていたもので、お爺さんはまるっきり二匹の狐に化かされていたのです。お爺さんは、欲張りな事を考えなければよかったと、それはそれは後悔したのでした。
(紅子 2012-1-31 19:00)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 新潟県 |
DVD情報 | DVD-BOX第7集(DVD第34巻) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第042巻(発刊日:1981年3月) |
講談社の300より | 書籍によると「新潟県のお話」 |
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