昔、三重のとある城跡に山姥が住むという古井戸がありました。
ある日の事、おもとという百姓の若女房が、焚きつけ用の松葉を拾いにやってきました。おもとは豊かな黒髪が自慢で、いつも洗い髪をさらりと束ねていました。おもとが、うっかり古井戸を覗き込むと、いきなりものすごい風が吹き上げました。びっくりしたおもとは一目散に逃げ帰って、そのまま熱を出して寝込んでしまいました。
不思議な事に、寝ているおもとの髪は目に見えてにょろにょろと伸び始めました。この髪は「切れ」と言うと激しい頭痛をおこし、「切るな」と言えばおさまるというおかしなものでした。これは山姥のたたりに違いないと、おもとは遍照院(へんじょういん)というお寺の御年寄様のところに七日間毎日通う事になりました。
おもとはものすごい長さの髪の毛を大きな荷車に載せ、やっとこさ通い続けました。七日目、御年寄様は一心に念仏をとなえ、おもとの髪の毛を一気に切り落としました。すると、切った髪の毛は竜巻のように舞い上がり、古井戸のある城跡の方へ飛んでいきました。
御年寄様は「山姥といえどもおなご、醜い姿で古井戸に身を隠しているのに、これ見よがしに黒髪を見せつけられて腹を立てたのだ」と言って、若い夫婦をたしなめました。こんな事があってから、おもとは自慢の髪を百姓の嫁らしく、くるくるとマゲに結う事にしました。
(紅子 2011-12-19 1:05)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 三重県 |
DVD情報 | DVD-BOX第6集(DVD第26巻) |
場所について | 三重県四日市市萱生町238 萱生城跡にある古井戸(現在は暁学園高校・中学校の敷地) |
講談社の300より | 書籍には地名の明記はない |
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