昔、真鶴(まなづる)の高丁場(たかちょうば)という所に、一匹の子ぎつねがいた。母ぎつねとはぐれたのか、一人ぽっちだったが元気に野原を走り回っていた。
時々寂しくなると、野原の一本道を通りかかる村人を騙して、嬉しそうにおんぶしてもらうのだった。しかし夜が明ける頃には、子供に化けた子ぎつねは大きな石や切り株にすり替わり、村人たちは三日三晩寝込むほど疲れ果ててしまうだのった。
狐の悪戯にほとほと困った村人達は、知恵のある定吉という村人に狐の捕獲を依頼した。定吉は野原の一本道で狐をおんぶすると、縄を掛けて逃げられないようにして真鶴へと走った。そしてとある家の柱に狐を縛り付け、村人総出で煙でいぶった。
狐はなんとか縄をかみ切って逃げ出し、庄屋屋敷に逃げ込む。追いかけた村人たちは屋敷中を探し回るが、狐は見つからない。最後に残った部屋には、干支の描かれている柱があり、村人たちはこの柱が一本多くなっているに気づく。一本一本数えた末、13本目の猪に化けた狐を見つけ出し、取り囲んで殺してしまった。
それ以来、野原の一本道は静かになったが、村人たちは何か心に引っかかるものがあった。「殺してしまうほどのイタズラだっただろうか、子ぎつねは寂しかっただけじゃないのだろうか・・・」
村人たちは、せめてもの償いにと、子ぎつねがいた野原が見渡せる場所に稲荷神社を建てて子ぎつねを弔った。
(紅子 2011-10-20 18:36)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 神奈川県 |
DVD情報 | DVD-BOX第3集(DVD第12巻) |
場所について | 真鶴(地図は適当) |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第107巻(発刊日:1980年かも)/講談社テレビ名作えほん第057巻(発刊日:1986年7月) |
講談社の300より | 書籍によると「神奈川県のお話」 |
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