むかし、ある所におばあさんとおじいさんが住んでいた。ある雨の日、おじいさんは家の前の小さな畑のそばで、子猫が鳴いているのを見つけた。おじいさんは、子猫を家に連れて帰り、あったかいお粥を食べさせてあげた。そして、おじいさんとおばあさんは、子猫を自分の子のように大事に育てた。
ある日、おじいさんが納屋に鍬を取りに行くと、なにやら納屋の奥のほうからシャリシャリという何かをこするような音が聞こえた。そして次の日も、やはりシャリシャリという音が納屋の方から聞こえた。猫が納屋へ行って見ると、音は納屋の床にあいた穴の下から聞こえてくるようだ。
また次の日、猫が納屋に行ってみると、豆を持ったねずみがいたので、ねずみを捕まえた。ところが、捕まえたねずみはこう言う。
「オラたちねずみは、雨が降るとねずみのお宝を磨かねばならないのです。これは大変な仕事で、疲れがたまったせいか、おっかさんが寝込んでしまいました。それで、おっかさんに栄養を付けさせるため、この豆が必要なんです。おっかさんが元気になったときには、必ず猫さんに食われます。」
猫は可哀想に思い、ねずみを逃がしてやった。そして家に戻ると、何を思ったのか、戸棚に飛び乗り、豆の袋やら壷やらを倒してしまう。おじいさんとおばあさんが、これはどうした事かと見ていると、猫は納屋へ行き、床の穴からねずみの巣穴に豆をたくさん落としていたのだ。
その頃、ねずみの巣穴では、子ねずみが持ってきた豆のおかげで、おっかさんの具合はだいぶ良くなったものの、子ねずみが猫に食われてしまうと大騒ぎになっていた。すると上から豆粒がたくさん降ってくる。子ねずみが上を見ると、猫が豆をたくさん落としてくれていたのだ。子ねずみは、これでもう思い残すことはないと言い、穴から出てきた。
「猫さんありがとう、約束どおりオラを食べてください。」
しかし、猫は何も言わずに家の中に帰ってしまう。それからしばらくして、チャリンチャリンという音が納屋から聞こえてきた。ねずみの巣穴から大判、小判がたくさん出てきたのだ。おじいさんとおばあさんが驚いていると、ねずみが一族で穴から出て来て、お礼を述べる。
「おかげさまで、おっかさんの具合もよくなり、無事ねずみのお宝を磨き上げることが出来ました。これはほんのお礼です。」その後、おじいさんとおばあさんはねずみのお宝のおかげで何不自由なく暮らし、猫もねずみもかわいがったそうだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-6-5 10:13 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岩手県 |
DVD情報 | DVD-BOX第12集(DVD第59巻) |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第111巻(発刊日:1980年かも)/講談社テレビ名作えほん第054巻(発刊日:1984年1月) |
講談社の300より | 書籍によると「岩手県のお話」 |
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