昔々、村から村へ旅をしながら、手伝い仕事で生計を立てる兄弟がおりました。弟は働き者でしたが、兄は強欲な怠け者で仕事はすべて弟にやらせておったそうです。それでも弟は、たった一人の身内の兄を大切にしておりましたそうな。
ある日、兄弟は「空飛ぶ舟を探し出し献上したる者に家屋敷と宝を与え、姫の婿として迎えるべし。領主」と書かれた高札を見つけました。兄弟は早速空飛ぶ舟を探し始めましたが、なかなか見つけることができません。そのうちに兄は弟を足手まといに思うようになり、兄は握り飯を一つだけ弟に与えて、二人は別々の道を行くことなったのです。
兄がしばらく行くと、道端に倒れた老人が握り飯を分けてくれと頼んできました。しかし兄はそれを断りました。一方、弟の方も老人に声をかけられました。弟がたった一つの握り飯を老人に渡すと、老人は空飛ぶ舟の見つけ方を弟に教えてくれました。それは、峠に転がっている一本の丸太を、七日七晩、一度も手を休めずに叩き続けるというものでした。
弟は老人に言われたとおり峠に向かい、丸太を叩き始めました。得体のしれない化け物達が現れては弟を苦しめ、さらに飢えと渇きが弟を襲いました。それでも弟は一度も手を休めず、ただひたすらに丸太を叩き続けました。そうしてついに七日目の朝、地面の中から空飛ぶ舟が姿を現しました。弟は早速空飛ぶ舟に乗り、兄の所へ向かいました。
弟が兄の所に辿り着いた時、兄は盗みをはたらいて捕えられ、千年杉から吊り下げられて息も絶え絶えになっておりました。弟は兄を助け出し、命を助けられた兄は改心してすっかり心を入れ替えました。そうして二人は空飛ぶ舟に乗って領主様の屋敷へ向かったのでした。
空飛ぶ舟を手に入れた領主様は喜んで、金銀家屋敷を兄弟に与えました。そうして兄弟は領主様の二人の姫をそれぞれ嫁に迎え、奥州平泉に落ち着いて、いつまでも幸せに暮らしたということです。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/3/2 21:37)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岩手県平泉町 |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第109巻(発刊日:1980年かも) |
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