遠州掛川の薗ヶ谷村に、印徳寺と言う古い寺があった。
ある時、印徳寺の和尚さんと小僧さんがおつとめの経をあげていると、突然天気が悪くなり、大粒の雨が降り注いだかと思った途端、裏の竹藪に雷が落ちた。
和尚さんが様子を見に行ってみると、雷神が竹藪の中でひっくり返って目を回していた。和尚さんは直ぐさま雷神を助け起こすと、小僧さんと共に懸命に怪我の手当てをしてあげた。
数日後、すっかり傷が癒えた雷神は和尚さんと小僧さんに深々と礼を言い、自らのヘソを外して和尚さんに差し出した。それはサザエの蓋のような形をしており、金色の毛がところどころに生えていた。
雷神は言った。「日照りで困った際、このヘソを水につけて雨乞いをして下され。必ずお役に立ちましょう」そうして、雷神は裏の竹藪にかけ込み、一気に空に舞い上がると、天へと帰って行った。
それから数年後、掛川の一帯を酷い日照りが襲った。雷神の言葉を思い出した和尚さんは、村人と共に寺の裏手にある、二本の松が生えた山の頂上に雷神のヘソを持って登り、たらいに水を張ってその中に雷神のヘソを収めて、雨乞いの祈祷を行った。
すると雨乞いを初めて3日目に、たらいの中のヘソがぴくぴくと動いたかと思うと、突然たらいの水を空に向かって吹きあげた。同時に一天にわかにかき曇ったかと思うと、大粒の雨がざぁざぁと降り注ぎ、村は日照りから救われたのだった。
以来、雨乞いを行った二本松の山を「おへそ山」と呼ぶようになり、それからも日照りの際は雷神のヘソをたらいに入れて雨乞いを行った。だが残念な事に、今では山の二本松はすっかり枯れてしまい、太い幹だけが残されているそうな。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2013-9-14 16:03 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 静岡県掛川市 |
DVD情報 | DVD-BOX第9集(DVD第44巻) |
場所について | 掛川市薗ヶ谷147-1 印徳寺 |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第102巻(発刊日:1980年かも)/講談社テレビ名作えほん第065巻(発刊日:1986年11月) |
講談社の300より | 書籍によると「静岡県のお話」 |
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