昔、山の奥の家に「ふき」という美しい娘とその父親が住んでおった。
ふきは山の中で熊に襲われて床にふせっておった父親の為、森の奥にあるというどんな病でも治すという伝説の泉の水をくんで来ようと考えた。
しかしこの泉には泉の精がおり、その精のとりこになってしまったら二度と帰れなくなるという話もあった。まだ恋というものをしらなかったふきは、水がめを持って泉の水をくみにいった。
泉は森の奥にあり、澄み切った水が鏡のように光っていた。しばらく見とれていたふきの目の前に、泉の精が現れ「ずっとここにいてくれ」といった。ふきは悩んだが、泉の精に手を差し伸べられるとまるで取りつかれたように「ずっとここにいる」と誓った。
やがて何年か過ぎ、ふきの父親がこの泉のそばを通りかかった時、ふきが持ってきていた水がめを見つけた。そのそばには黄色の可愛らしい花が咲いていた。
それからその花は「ふきのとう」と言われるようになり、それからもふきの姿を見た者はおらんそうな。
(投稿者: たまきち 投稿日時 2013-3-31 22:32 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松谷みよ子(未来社刊)より |
出典詳細 | 秋田の民話(日本の民話10),瀬川拓男、松谷みよ子,未来社,1958年07月30日,原題「ふき姫物語」,採録地「秋田市」,話者「伊藤義男」 |
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