むかしむかしのことです。ある家に三人の男の子の兄弟と母親とが住んでおり、ある時お母さんは重い病にかかってしまいました。ある日のこと、お母さん「おら、山梨が食べてえなあ。」そう言ったのです。山梨は山の奥深くふかーい沼のそばになっているという話で、母親想いの兄弟は何とか梨を食べさせてあげたいと考えました。
太郎が最初に山へ向かって出発しました。太郎が行くと、一本の木の根方(ねかた)に一人のお婆さんが座っていました。不思議なお婆さんは、不思議な話を太郎にして聞かせました。太郎は不思議なお婆さんが話して聞かせたことを「そんなことがほんとにあるだべか。」と考えながら歩いて行くと、笹や山鳩や風の言うこともきかずに先へ先へと急いで行きました。そして太郎は沼に辿り着き、どっさりと実をつけた山梨の木を見つけました。太郎が沼に落ちた梨を集めていると、何やら黒い影がヌーッと後ろから近寄りパクッと飲み込まれてしまいました。それはこの沼に大昔から住んでいる沼の主だったのです。
いつまで待っても太郎は帰ってきません。今度は次郎が沼に行くことになりました。太郎の時と同じようにお婆さんは次郎に声をかけようとしましたが、次郎はお婆さんの言うことなど聞こうともしませんでした。そして笹やカラスや谷の風にも耳を貸さず、山梨の木のそばまでやって来ました。次郎は山梨の木に登りましたが、木の枝が折れ、沼に落ちてしまいました。やがて黒い影がスーッと近付き、パクッと沼の主に飲み込まれてしまいました。
上の兄さん達があまりに帰りが遅いので、三郎も沼まで行ってみる決心をしました。三郎は兄さん達とは違い、木の根方にいたお婆さんの話をよく聞きました。三郎は笹やふくろうや風の言う通りに進んで行きました。そして沼に着き、どっさり実を付けた山梨の木を見付けて、実をいっぱいもぎ取りました。ところが、あまりに喜んだ三郎が木の反対側から降りてしまいました。すると黒い影がスーッと近付きパクッと三郎をひと飲みにしてしまいました。ところがどうしたわけか、沼の主はそれから散々苦しんで七転八倒した揚句、完全にのびてしまいました。
どうやら三郎は、風の言われた通りに付けていた茨の尻尾で助かったようです。中から太郎、次郎、三郎が出てきました。こうして三郎の大手柄で三人は無事、お母さんの所へ帰りました。お母さんは、兄弟達の持って帰った梨を食べると、お母さん「おいしい。」たった一言そう言い、見る見るうちにお母さんの病は治ってしまいました。そして兄弟三人とお母さんは、それからもお互い助け合っていつまでも幸せに暮らしました。
(投稿者: 藍子 投稿日時 2011-11-5 22:38 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | (表記なし) |
DVD情報 | DVD-BOX第11集(DVD第53巻) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第21巻-第103話(発刊日:1978年1月20日)/童音社BOX絵本_第74巻(発刊日不明:1970~1980年頃)/二見書房まんが日本昔ばなし第13巻-第50話(発刊日:2006年8月8日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
童音社の絵本より | 絵本巻頭の解説(童音社編集部)には、地名の明記はない |
講談社の300より | 書籍には地名の明記はない |
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