昔々、地頭様と呼ばれる偉い人が強い勢力を持っていた頃の事。
ある村の百姓夫婦が、畑仕事の折に不思議な石を拾った。それは緑色がかった、良く光る石であった。夫婦はその石を神様からの授かりものだと考え、「ピッカリコ石」と名付けて家の宝とした。
ところが、その石の美しさを噂で聞いた村の医者が、半ば強引に百姓夫婦に代金を与え、奪うような形でピッカリコ石を買い求めた。医者はその石を庄屋様の家へ持って行き、自分が百姓夫婦に与えた代金よりも更に高い値段で売り飛ばした。
庄屋様の家ではピッカリコ石を厨子(ずし)に納め、敢えて石を観ようとする者には米一升の代金を課した。それでも見物人は引きも切らず、庄屋様の元には米がたんと貯まって、米蔵の建て増しが必要なまでになった。
ピッカリコ石の評判は地頭様の耳にも届いた。地頭様は庄屋様を呼びつけると、力づくで石を奪い取ってしまった。
地頭様がピッカリコ石を奪った夜の事。突然ピッカリコ石は炎を吹き上げながら空へ舞い上がった。石は地頭様の館を残らず焼き払い、続けて庄屋様の家に飛来すると米蔵を残らずめちゃめちゃに破壊した。医者の手元にあった石の代金も、あっと言う間に灰になってしまった。後には、医者が百姓夫婦に払った石の代金だけが残された。
そして、ピッカリコ石は空高く舞い上がって見えなくなった。百姓夫婦は空へ消えて行く石を観て「ピッカリコ石様が神様の元へお帰りになるのだ」と思い、ずっとその姿を見送ったそうな。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2013-9-22 14:48 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 川崎大治(童心社刊)より |
出典詳細 | 日本のふしぎ話(川崎大治 民話選3),川崎大治,童心社,1971年3月20日,原題「ピッカリコ石」 |
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