佐賀に勘右衛門(かんね)さんと言う目はしの利く人が居て、ある時中原(なかはら)という所までふらりと遊びに出かけましたそうな。
その帰り道、勘右衛門さんは色々な能力を持った人物に出会い、旅の仲間に加えました。大木を拳骨ひとつで砕いて薪に作る力持ち小僧。鼻息で空の雲を吹き飛ばす鼻息男。どんな遠い場所の標的も狙い外さず撃ち抜く鉄砲男。あまりにも足が速くて片足で歩かねばならない程の足を持つ早駆け男…の4人です。勘右衛門さんは「これほどの傑物が集まれば大儲け出来る」と企んでいたのでした。
勘右衛門さんと仲間達は唐津のお城まで行きました。そこには高札が立っており「姫と早駆けくらべをして勝った者には望み通りの褒美を取らす」とありました。 これは大儲けの良い機会だと勘右衛門さんは、仲間の早駆け男を姫と駆けくらべさせる事にしました。勝敗の条件は「先に浜崎の寺にある花を摘んで、唐津の城 に持ち帰った者が勝ち」。
合図と共に姫と早駆け男は走りだし、浜崎の寺まで駆けて行きましたが、いざ勘右衛門さんが勝負の途中で遠眼鏡で 覗いてみれば、戻って来るのは姫ひとり。何かあったのかと浜崎の寺を見れば、早駆け男はあんまり早く着き過ぎたもので、花畑の傍で居眠りをしているのでした。勘右衛門さんは鉄砲男に頼んで、早駆け男の傍の大木目がけて一発鉄砲を撃たせました。
「ズドン!」大きな音に驚いて目を覚ました早駆け男は跳ね起きると花を摘んで物凄い早さで駆けもどり、唐津の城の直前で姫を追い越して、からくも勝負を制したのでした。
こうして勝負に勝った勘右衛門さんは、褒美として「蔵の米を持てるだけくれ」と殿様に言い、殿様もそれを許しました。勘右衛門さんは力持ち小僧に銘じて、一番大きな米蔵を建物ごとごそっと持って行かせ、悠々と城を後にしました。
これに驚いた殿様と家来達は米を奪い返そうと、大勢の侍を勘右衛門さん一行にけしかけましたが、勘右衛門さんに頼まれた鼻風男が鼻息をフン!とやって侍達を蹴散らしてしまったので、殿様も負けを認めざるを得ませんでしたとさ。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2013-2-27 0:35)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 宮地武彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 佐賀の民話 第一集(日本の民話60),宮地武彦,未来社,1976年06月30日,原題「勘右衛門とお姫さまのかけごろ」,採録地「佐賀郡富士町下無津呂」,話者「合瀬光時」 |
場所について | 佐賀の唐津城 |
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