昔、山奥に、年の近い木こりの三兄弟が住んでいた。三兄弟は結婚を考えるようになり、縁結びで有名な鵜戸さんにお参りしようと決め、歳の順にお参りに行くこととなった。
翌朝、長男がお参りに出かけたが、その途中、森の中で日が暮れてしまった。困った長男は、近くの茶店のお祖母さんと孫娘に一夜の宿を求めた。
長男が床に就く前、孫娘の口から「私たちは隣りの部屋で眠るが、決して部屋を覗かないでほしい」と念を押された。長男は、娘の言葉が気になり、隣りの部屋をそっと覗いてみると、とぐろを巻いた大蛇が口から火を噴きこちらを見ていた。長男は恐怖に震え、這う這うの体で逃げ帰った。
話を聞いた次男は鉞(まさかり)を持って、茶店に向った。しかし、長男と同じように、孫娘たちが寝ている部屋を覗いて、大蛇に驚いて次男も命からがら逃げかえった。
長男と次男から大蛇の話を聞いた三男は、木刀を持って茶店に向った。三男は「今から鵜戸さんに縁結びのお願いに行く身で、孫娘との約束を破ったら神様に申し訳ない」という思いから、決して隣りの部屋を覗かなかった。
しばらくすると、外は大粒の雨が降りはじめ、雷鳴が轟くと、隣りの部屋から孫娘の悲鳴が聞こえた。三男が目を覚まし、隣りの部屋の方に目をやると大蛇の影が見え、孫娘に襲いかかろうとしていた。
三男は孫娘との約束が気になったが、隣りの部屋に駆け込み、木刀で大蛇の首を斬りおとした。ところが、大蛇と思ってたものは泥棒除けの作り物で、孫娘は雷鳴に驚いて悲鳴を上げただけだった。
この出来事がきっかけで、三男と孫娘は夫婦になった。ふたりは懸命に働いたおかげで茶店は大繁盛した。それもこれも鵜戸さんのおかげと考えたふたりは、良い日を選んで御礼参りをし、いつまでも鵜戸さんへの感謝を忘れなかった。
(投稿者: Kotono Rena 投稿日時 2013-9-11 21:43)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 比江島重孝(未来社刊)より |
出典詳細 | 日向の民話 第二集(日本の民話43),比江島重孝,未来社,1967年12月20日,原題「鵜戸さん参り」,話者「永野伊作」 |
場所について | 鵜戸神宮 |
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