昔、あるお寺に和尚さんと小僧さんの珍念が住んでいた。
この地方では婚礼になると村の若い衆が「お地蔵さんのように腰を落ち着ける」という意味で『お地蔵さん』を担いで婚礼のある家の前に運び、婚礼のある家から『餅』をもらう習わしだった。
ある日、婚礼があるという事で小僧さんは餅が楽しみで仕方が無かった。お弔いや婚礼の時はお寺にも餅が届けられるからだった。しかし夜遅くなっても餅が届かない。しばらくすると花婿さんがお寺に駆け込んできた。花嫁が大変だからすぐに来て欲しいという。
花嫁がお地蔵さんを運んできた若い衆に餅を配ろうとしたとたん、物が言えなくなってしまったというのだ。
和尚さんと珍念が家に駆けつけると、花嫁さんが苦しそうにうずくまっていた。和尚さんは早速魔除けの祈祷を行ったが効き目が無かった。
花嫁さんをじっと見つめていた珍念はある事に気がついて、和尚さんにそっと耳打ちをした。
珍念は自分と花嫁以外の人を部屋の外に出すと、花嫁は起き上がって口を動かし、何かを飲み込んだ。
花嫁は若い衆に『餅』を配るとき、我慢できずに餅をひとつ『つまみ食い』をしたが、人が来たので飲み込むことが出来ず、それで物が言えなくなったふりをしていたのだった。
婚礼の晩のとんだ騒ぎだった。
(投稿者:のんの 投稿日時 2014/8/10 16:03)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | クレジット不明 |
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