昔、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいた。
ある日の事、おじいさんが畑仕事から帰ろうとすると、沢山の狐が稲荷権現に向かって走っていくのを見つけた。不思議に思って後を付けたおじいさんは木の上に登って様子をうかがった。
狐たちは鳥居の下に集まり、やがて一匹ずつ鳥居を飛び超え始めた。狐たちがその度に「化けろ化けろ」と言うのを聞いたおじいさんは、「この鳥居を飛び超えると『化ける』ことができる。」と気がついた。
狐たちが帰った後、おじいさんも真似ようとしたが、到底鳥居を飛び超えられない。そこで『蓑』と『笠』を代わりに鳥居の向こう側に投げた。そして、それを身につけてみると「姿を消す」事が出来た。
翌日、蓑と笠を身につけたおじいさんは酒屋でお酒を無断で沢山飲んだり、饅頭屋さんで饅頭を盗み食いしたりした。
ところがしばらくして、何も知らないおばあさんが蓑と笠を見つけて燃やしてしまった。おじいさんはガッカリしたが、蓑と笠の灰を紙に包んで大事に仕舞っておいた。
そしてある日の事、おじいさんが灰を体中に塗ってみると、灰でも効果があったと見えて姿を消す事が出来た。町に繰り出したおじいさんは、酒屋の一人娘の鼻にこっそり灰を振りかけた。すると酒屋では娘の鼻が消えてしまったと大騒ぎになった。医者や祈祷師を呼んでも効き目が無く酒屋は困り果てた。
おじいさんは酒屋に出掛けると「娘さんの鼻を治して進ぜよう。」といって娘の部屋に入り、適当なおまじないを唱なえ、娘の顔をはたいて灰を取ってあげた。すると鼻が元通りに現れて娘は喜んだ。
おじいさんはこうして酒屋の主人から大層感謝され、お土産にお酒を貰って帰って行った。
(投稿者:のんの 投稿日時 2014/8/10 15:32)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 比江島重孝(未来社刊)より |
出典詳細 | 日向の民話 第二集(日本の民話43),比江島重孝,未来社,1967年12月20日,原題「かくれ蓑かくれ笠」,話者「永野伊作」 |
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