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No.0345
びんぼうがみのおきみやげ
貧乏神の置きみやげ
高ヒット
放送回:0217-A  放送日:1979年12月29日(昭和54年12月29日)
演出:光延博愛  文芸:沖島勲  美術:小関俊之  作画:前田実
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大晦日に大火を焚いたり、熊手を買ったりする由来。

昔、ある所に半兵衛(はんべえ)ときねという大変な横着者夫婦が住んでいた。半兵衛はちっとも仕事をせず、女房のきねは飯の仕度も面倒臭がり、いっぺんにたくさんご飯を炊くので、おととい炊いた固い冷や飯を2人で食べるというような有様だった。

こんな調子なので、ある日貧乏神が2人の横着ぶりに惹かれて家にやって来た。貧乏神は、半兵衛の家が気に入り、この家に居つくことにした。そのため2人は、ますます貧乏になっていった。

ある年の大晦日、明日は正月だというのに半兵衛の家に米は1粒もなく、おまけに薪もないので、2人は布団の中で寒さに震えていた。あまりの寒さにとうとう我慢が出来なくなった半兵衛は、囲炉裏でござを燃やして暖をとった。すると貧乏神も寒かったとみえて、囲炉裏の火にあたりに現れた。

さて、正月だというのに餅も酒もない家を見て、さすがの貧乏神も見かねたのか、熊手を2本取り出し、これを街で売って酒と餅を買ってくるよう半兵衛に言った。無精者の半兵衛、気が進まなかったが、仕方なく熊手を持って街に売りに出かけた。

ところが、年の瀬の街はみな忙しく、誰も半兵衛の熊手など買う者はいなかった。がっかりして半兵衛が家に帰ろうとすると、炭焼きの男が歩いて来た。この男も、やはり持ってきた炭が売れず家に帰るところだった。このまま熊手を家に持ち帰っても仕方ないので、半兵衛は熊手を男の持っている炭と交換した。

しかし餅や酒を待ちわびていた女房のきねは、炭を担いで帰って来た半兵衛を見て怒り出す。半兵衛も馬鹿馬鹿しくなり、やけになって炭俵の炭を全部囲炉裏にくべてしまう。すると炭俵の炭をいっぺんに燃やしたものだから、部屋の中は汗をかくほど暑くなった。暑いのが苦手な貧乏神、これには参ってしまい、この家から出て行くことにした。最後に貧乏神は、置き土産と言って熊手を1本置いて家を去っていった。

翌朝、半兵衛は正月くらい掃除をするかと思い、何気なく貧乏神の残した熊手で部屋のワラくずをかき集めた。すると何としたことか、熊手で集めたワラくずは米俵に変わってしまった。さらにこの熊手で鉄クズを掃けば鉄クズは小判に、草を掃けば野菜になったので2人はいっぺんに裕福になった。

今でも大晦日に大火を焚いたり、縁起物の熊手を買ったりするのは、こうした謂れがあるからだそうだ。

 

(投稿者: やっさん 投稿日時 2011-12-5 18:39)


ナレーション市原悦子
出典垣内稔(未来社刊)より
出典詳細安芸・備後の民話 第一集(日本の民話22),垣内稔,未来社,1959年11月25日,原題「貧乏神の置きみやげ」,採録地「賀茂郡」,話者「梅田某、原吉雄」
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※掲載情報は 2011/12/5 18:39 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
3件表示 (全3件)
貧乏神  投稿日時 2020/5/9 10:29
怠け者夫婦が特に努力もせずに裕福になるという昔話の主流から大きく外れたこの話。
この話の意図を読み解く上で重要なポイントが2点あると考察した。

1つ目はこの夫婦は他人に迷惑をかけたり神仏を邪険に扱ったり生物の命を軽んじたり等はしておらず、ただ面倒臭がりというだけだということ。要は自己責任。それ故に神から罰が下ることもなかったのだろう。

2つ目はこの夫婦が貧乏神に怖気づいたり腹を立てたりしなかった点である。彼らは自分の家に住み着く貧乏神に対してほとんど見向きもしておらず、露骨なまでに貧乏神を気に留めていない描写が見られる。彼らにとっては貧乏神が自分の家に居ることは大した問題ではなく、「今」物事が面倒かどうかのみを首尾一貫として考えているのである。長期的な不幸を嘆かず受け入れ、「今」起きていることに一喜一憂する姿勢を貫き通したことが報われる結果に繋がったのではないだろうか。

以上の2点「公共の福祉に反しない自己責任の中で生きる」「初志貫徹とした生き方」これらを持てば報われることもあるんだよ。というのがこの話から得られる教訓であると私は考えた。興味深い話である。

まぁ実際は大した意味もないかもしれないが(笑)。しかしそれがまんが日本昔ばなしの面白い所でもある。
Mr・ヤム芋  投稿日時 2018/4/15 13:59
貧乏神優しいな。いつ見ても駄目なのはこの夫婦だな。
ゲスト  投稿日時 2015/11/15 22:10
貧乏神様、めっちゃええものお持ちですやん。
置いていったのか、忘れていったのか…
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