昔ある小さい村はずれに、おじいさんとおばあさんが住んでいた。
この家にはなぜか、ねずみが大変多かった。おばあさんはねずみ達を忌々しく思っていたが、おじいさんは「ねずみとて命があるもの。またいつかは何かの役に立つかもしれない」といって、気にもかけなかった。
ある年のこと。おじいさんは重い病気で寝込んでしまった。おばあさんがおじいさんに、小豆粥を作ろうと蔵に入ろうとしたとき、ねずみ達の会話が聞こえた。ねずみ達の言うことには、おじいさんの病には湯の花(温泉地の湯の吹き出し口にできる湯の成分の塊)が効くのだという。
おばあさんは急いで湯の花を取りに行った。おかげでおじいさんはすっかり元気になった。おじいさんは「ねずみ達のおかげだ」と、ねずみ達に感謝した。
ある日のこと。今日はねずみ達がやけに静かであることに気が付いたおばあさんが、そっとねずみ達の会話を聞いてみた。するとねずみ達はこの家を出ていく相談をしていた。今夜、山火事があるのだという。
この村を取り囲む野火止めの溝(のびどめのみぞ)が、もう少し広ければ、村は助かるのに・・・と、話し合うねずみ達であった。おばあさんはびっくりして、おじいさんにねずみ達の話していた山火事の話を伝えた。
おじいさんは急いで村人たちを集め、村人たち総出で村を取り囲む野火止めの溝を広げた。その日はみんな疲れて早くに眠ってしまった。その明け方のこと、強い風が吹き山火事が起こった。しかし野火止めの溝を広げたおかげで、村は助かった。
おばあさんはおじいさんに「ねずみ大黒」を作ってほしいと頼んだ。おじいさんは快くねずみ大黒を作った。そしてこの村ではねずみ大黒をどこの家でも祀るようになった。その最初がこのおばあさんだったという。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-11-4 11:28 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 岸なみ(未来社刊)より |
出典詳細 | 伊豆の民話(日本の民話04),岸なみ,未来社,1957年11月25日,原題「ねずみの予言」,採録地「湯ヶ島長野」 |
場所について | 伊豆市湯ヶ島長野(地図は適当) |
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