No.0327
やくろうのいぬ
弥九郎の犬
高ヒット
放送回:0205-A  放送日:1979年10月06日(昭和54年10月06日)
演出:前田康成  文芸:境のぶひろ  美術:秋保富恵  作画:前田康成
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あらすじ

昔、紀州の山奥に弥九郎という名の猟師が母親と二人で暮していた。ある春の朝、弥九郎が家の戸を開けると、そこには一匹の子犬がいた。

あれは昨年の秋のことだった。弥九郎が夜中に山を歩いていると、深手を負ったオオカミに出くわしのだ。弥九郎はこのオオカミに傷の手当をして、「もしこれで助かったなら、今度の春生まれた子を一匹くれろ。」と笑いながら言った。オオカミはこの約束を果たしたのだ。

弥九郎はこの子犬をマンと名付け、厳しく狩の技を仕込んだ。その甲斐があってか、マンは並みの猟犬をはるかにしのぐ優秀な猟犬に成長した。

次の年の初夏のこと。弥九郎は狩の途中、熊の気配を察知して岩陰に隠れていた。ところが、マンはかまわず飛出し大熊の後ろ足に噛みつく。弥九郎はすかさず槍で大熊にとどめを刺した。何と、マンは一撃で大熊の後ろ足の筋を噛み切っていたのだ。このことがあってから、弥九郎とマンの名は紀州一帯に知れ渡った。

その年の冬、殿様にご覧にいれる大掛かりな狩が催された。マンはこの場でも見事に猪を仕留め、弥九郎は殿様からたくさん褒美をもらった。弥九郎は意気揚々と家に帰った。

ところがどうだろう。弥九郎のおっかさんはマンを山に帰せと言うのだ。「人間に飼われたオオカミは、千匹生き物を殺すと、次にはその主人を食い殺す。」弥九郎が家を出掛ける時、読経を頼んだ旅の坊さんが、マンの素性を見抜きこんな恐ろしいことを言ったのだ。そんな話は弥九郎には到底受け入れられない。弥九郎は言う。「マンは俺の犬。マンあっての弥九郎なんや!!」

外にいたマンは人間の言葉を理解したのだろうか。「ウォーン」と一声鳴くと、山の方へと走り去って行く。「マン、帰ってくれー!!」弥九郎は雪の降る中、裸足で家を飛び出しマンの後を追う。マンは振り返り、一度弥九郎の方を見ると、悲しそうにまた山の方へ歩き出した。それ以降、マンが弥九郎のもとに帰ることは二度となかった。

優秀な猟犬として知られる紀州犬は、このお話のマンが祖先だと伝えられている。

(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-4-29 14:02)


参考URL(1)
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/minwa/kishu/mihama/index.htm
参考URL(2)
http://www.ne.jp/asahi/japan/gaina/intellect-4.html
ナレーション市原悦子
出典倉田正邦(未来社刊)より
出典詳細伊勢・志摩の民話(日本の民話31),倉田正邦,未来社,1961年02月28日,原題「弥九郎の犬」,採録地「南牟婁郡」,話者「山本梅三郎」
場所について三重県熊野市御浜町の阪本地区(地図は適当)
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地図:三重県熊野市御浜町の阪本地区(地図は適当)
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※掲載情報は 2012/4/29 14:02 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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無名  投稿日時 2017/3/18 7:13
猟犬なので、安全な犬とは言えません。
紀州犬は可愛いです。
猫好きですが…
セン  投稿日時 2012/5/11 18:58
この話にはいくつか謎が残ります。

何故共に生き褒美をもらう程功を馳せたマンを、

・何故おっかさん(話によってはおばさん)は
旅の坊さん如き通りすがりの人物の言うことに従い疑うのか。
・マンを失った後の弥太郎はどうなったのか。
・「マンの素性を見抜き」とあるが、マンとそのまま暮らし続けたら
 本当に弥太郎は喰われてしまったのか。
 それならばマンの悲しい素振りは何故なのか。
 弥太郎を仕留められなかったせいなのか、それとも人の疑いの心のせいなのか。

色々考えさせられました。
ただ一つ言えるのは、私が弥太郎だったら悔いても悔い切れない一件だったろうなと。
マンは弥太郎を食おうだなんて思ってもなさそうですし
たとえ食われたとて弥太郎は後悔しなかったろうなとそんな気がします。
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