昔、天城の山に木挽きの善六という男がおった。善六は体は大きいが、不器用で怠け者であった。善六が木挽きとして活躍するのは、いつも夢の中だけであった。
ある日、善六は雲見の浅間神社に「どんな石でも切れる、木挽きにしてほしい」と願をかけてお宮にこもった。21日目の満願の日に、善六は神社の境内の大石をのこぎりで切ることができた。
こうして意気揚々と仲間のところに戻った善六であったが、石は切れるのに木はまったく切れないのであった。親方に「お前の仕事は木挽きだ。木挽きは木が切れないと仕事にならない」と言われ、善六は自分が誤った願掛けをしてしまったことに気が付き、後悔した。
その日から善六は、生まれて初めてまじめにのこぎりを手にするようになった。しかし丸太にのこぎりの刃が入らず、なかなか切れるようにならないのであった。 善六の手は血だらけになってしまった。ある夏の日のこと、善六の汗が落ちた箇所からのこぎりの刃が入り、善六はとうとう丸太を切ることができた。
それから善六は木挽きとしてどんどん腕を上げて行った。しまいには江戸の深川にまで、「大挽きの善六」として、その名前を知られるような木挽きとなったということである。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-10-27 13:46)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岸なみ(未来社刊)より |
出典詳細 | 伊豆の民話(日本の民話04),岸なみ,未来社,1957年11月25日,原題「大挽きの善六」,採録地「湯ガ島」 |
場所について | 賀茂郡松崎町雲見386-1 雲見浅間神社 |
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