昔、ある家に一匹の老犬(タロウ)と猫が飼われておった。
ある日家人は、一日中寝てばかりの老犬を嫌い「山に捨てるか、殺して皮を剥ぐか」と話していた。それを聞いた老犬は、同じく年取りのオオカミに相談すると、「ワシが家人の赤ん坊を誘拐するから、それを犬が取り返し手柄を立てろ」と提案した。この作戦は思いのほか成功し、感謝した家人は老犬を大切に扱うようになった。
それから一か月たったある日の事、オオカミが老犬のところにやってきた。「この間のお礼として家畜のニワトリを1匹よこせ」と、老犬を脅迫した。老犬が断ると、オオカミは「じゃあ明日、山へ来いや」と言い残し去って行った。
翌日、覚悟を決めた老犬が、付き添いの猫と一緒にオオカミの住む山に向かっていた。オオカミは、助っ人の鬼を伴い老犬がくるのを隠れて待っていたが、付き添いの猫がネズミと間違って鬼の耳に噛みついた。急に耳を噛みつかれた鬼は、びっくりして山奥へ逃げて行ってしまった。オオカミも、あわてて鬼を追いかけ山奥へ走り去っていった。
犬は訳がわからないまま茫然としていたが、猫はすくっと立ち上がり、得意げに言った。「ね!だから言ったじゃろ。大丈夫だって」
(紅子 2011-6-10 19:14)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 坪田譲治(新潮社刊)より |
出典詳細 | 新百選 日本むかしばなし,坪田譲治,新潮社,1957年8月30日,原題「オオカミに助けられた犬の話」 |
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