昔々、山間の村に五作という働き者の若者がおった。五作は額に大きなこぶがあるのが悩みだった。
ある日、野良仕事をしていた田んぼで一匹のタニシが話しかけてきた。タニシがいうには、大雨で上から流されてきたが自分には足がないので登る事も出来ず、兄弟とも離れ離れで寂しい。自分を上の田んぼに放り投げてくれないか、と頼むので五作はそうしてやった。
それから後もタニシを見つけるたびに仕事中でも上の田んぼに放り投げてやっていた。
そうして3年ほどたったある夜のこと、たくさんのタニシが五作の家に訪ねて来て、日頃のお礼をしたいから何か願い事がないかと聞く。五作は額のこぶが小さな頃からの悩みだがこれは言っても仕方がないことだから、と答えた。
すると一匹のタニシが顔に登ってきてこぶの周りをくるくるまわり、五作が何のまじないかと不思議がっている間に消えてしまった。
翌朝、五作が起きてみると額のこぶが無くなっていて、五作は涙が出るほど喜んだ。その話を聞いた村人達もタニシを見つけたら上の田んぼへ放り投げるようになったそうな。
(投稿者: ひかる 投稿日時 2013-9-9 9:40 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 山下良枝(鎌倉書房刊)より |
出典詳細 | 父母が語る日本の民話(下巻),大川悦生,鎌倉書房,1978年4月20日,原題「タニシの恩がえし」 |
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