昔あるところに、隣同士で炭焼きの家があって、それぞれの家で同じ時期に子供が生まれた。
一つの家では男の子、もう一つの家では女の子が生まれた。炭焼き達はそれぞれの子供たちが大きくなったら夫婦にしようと約束した。
子供たちが6歳になった頃、女の子の親の炭焼き夫婦は、炭をいくら売ってもあまり銭にならないことを嘆いていた。それを聞いた女の子は「山へ行って銭を拾ってくる」と言って、山へ出かけて行った。
この女の子には山の福の神様がついていた。女の子がさわると、葉っぱでも石でもなんでも銭に変わってしまうのであった。おかげで女の子の家は、どんどん裕福になった。
男の子と女の子が年頃になった頃、男の子の親が女の子の家にやってきて「昔からの約束なので、息子を婿養子にもらってほしい」と言った。人の良い女の子の親は、快くそれを受け入れ、二人は夫婦となった。
夫婦となってからは二人で力を合わせて働いた。山の福の神様のおかげもあり、あっというまにその辺一帯の長者となった。
ところが、旦那の方にはおごり高ぶりになり、さらに怠け癖も付き、毎晩夜遊びをするようになった。ある夜、夜遊びを終えて帰ってきた旦那が、妻が用意した食事を「こんなものが食えるか!」と投げ捨ててしまった。
すると、夫婦の家の蔵の中にしまってあった財産が、すべてコクゾウムシに変わり、一斉に蔵から出ていった。それはもう、恐ろしい光景であった。そして夫婦には何も残らず、山の福の神様もその時に一緒にどこかへ行ってしまったのか、それからは何をやってもうまくいかなくなってしまった。
やがて、この長者夫婦の屋敷跡は深い森となり、「長者ヶ森」と呼ばれるようになった。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-9-15 15:22 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第二集(日本の民話46),松岡利夫,未来社,1969年10月20日,原題「長者ヶ森」,採録地「美弥郡」,話者「木島俊太郎、唐橋ミカサ」 |
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