昔、鎌倉のある村に、大きな瓦屋根の家と小さなわらぶき屋根の家が寄り添うように建っていました。二つの家の主人はとても仲良しで、その息子の六助と千吉もやっぱり仲良しでした。
二人の主人が亡くなった頃、わらぶき家に住む千吉が、死後の世界でさまよう父親の姿を夢に見ました。なんでも、六助の親父から借りていた「銭一貫と麦三俵」を返さずに死んだため、閻魔(えんま)様の手下の鬼たちが許してくれず成仏できないでいる、との事でした。
そこで千吉は、一年間働きづめに働いてどうにか六助に借りた物を返す事が出来ました。しかし今度は、六助の親父が夢枕に立ち、「困った時はお互い様、貸したつもりもない物を受け取ってしまうとは、世間さまに顔向けできない」と、六助を叱りつけました。
二人の親孝行な息子たちは、父親の言いつけを守ろうと貸し借りを巡り、最後にはケンカになってしまいました。困った二人は、とうとう鎌倉のお奉行様に裁いてもらう事にしました。お奉行様は、親孝行な二人の話を聞き、銭一貫と麦三俵はいったん奉行所あずかりとし、あらためて二人の息子に返し、それを菩提寺に納めて父親の供養をするように提案しました。
二人の息子たちは、このお裁きに大満足してそれに従いました。この心温まる話を知った村人たちは、いつまでも二人の事を語り伝えたそうです。
(紅子 2011-9-25 18:55)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 神奈川の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 神奈川の伝説(日本の伝説20),森比左志,角川書店,1977年7年10日,原題「夢の孝心-鎌倉の裁き」 |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第27巻-第133話(発刊日:1978年12月20日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
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