昔、ある村に北と南に寺があり、それぞれの寺には小坊主がおった。
どちらの寺の和尚も大変なケチで、食事は毎回、大根の干し葉が入ったおじやであった。北の寺の小僧は「白いご飯を食べたい」と和尚さんに言うのであったが、和尚さんは白いご飯を炊こうとはしなかった。
北の寺の和尚と南の寺の和尚は仲良しで、今日も北の寺の和尚は南の寺へ囲碁をしに行った。囲碁の腕前は北の寺の和尚の方がずっと上であった。北の和尚は囲碁に勝つのは「古くから寺に住みついている、天狗さまのおかげじゃろう」と言っていた。
ある日、北の寺の小僧が本堂の掃除をしているときに、南の寺の小僧がひょっこりと訪ねてきた。二人は本堂のお供物のまんじゅうを食べながら、毎日干し葉のおじやを食べさせられていることに対する愚痴を語り合った。その時に北の寺の小僧は、干し葉のおじやをやめさせる、あることを思いついた。
北の寺の小僧は、天狗の面をつくり、千早という神主様が着るような衣を紙で作った。そして北の寺の小僧は、夜になると本堂の屋根の上にあがった。北の寺の和尚が毎晩、外にある便所に行くことを知っていたのである。やがて和尚が便所に行くために外に出てきた。そこで北の寺の小僧は天狗の格好をして、「これから小僧に白いご飯を食べさせないと、この寺を焼き払ってしまう」と言った。北の寺の和尚は本物の天狗と勘違いして、翌日は白いご飯を小僧に食べさせた。
それを聞いた南の寺の小僧は、北の寺の小僧から天狗の面と千早を借りて、自分も同じことをしようとした。夜になると天狗の格好をして本堂の屋根に上ったが、一向に和尚が出てくる気配がない。そろそろ夜が明けてきて、南の寺の小僧があきらめかけたころに和尚が出てきた。南の寺の小僧はここぞとばかりに天狗のように声を張り上げた。しかし、天狗の格好が取れてしまい、和尚に大変叱られてしまった。
こうして南の寺の小僧の方は大失敗に終わってしまい、その日はいつもよりも干し葉が多く入ったおじやを食べさせられたということであった。でも干し葉は本当は体にはとてもいいんじゃよ。
(投稿者:カケス 投稿日時 2014/3/2 15:52)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | クレジット不明 |
出典詳細 | 山梨のむかし話(山梨国語教育研究会,日本標準)かもしれない。 |
場所について | 多分、山梨 |
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