昔、ある村の畑の中に、ぴょこんと1本、見たこともないような木が生えていました。
クワの木でもなく、ケヤキの木でもない、花を咲かせるわけでもなく、葉が散るわけでもない。何の役にも立たないし何のへんてつもない木でしたが、村人たちは愛着を持って「なんじゃもんじゃの木」と呼んでいました。
ところが、村には乱暴者でへそ曲がりな親子がいました。ある時、「なんの役にも立たない木なんか、へし折ってやる」と、息子がなんじゃもんじゃの木の枝に取り付きました。すると翌日、息子の体に一文銭のような丸いブツブツができ、高い熱がでて寝込んでしまいました。
村人たちは「きっとバチがあたったんだろう」と噂し、この一件から「なんじゃもんじゃの木さま」と言って、まるで神様のように木を崇めるようになりました。
こうなってくると、父親はますます面白くありませんでした。父親は斧を持ち出し、なんじゃもんじゃの木を切り倒そうと、幹に斧を振り下ろしました。
翌朝、父親はなんじゃもんじゃの木の下に倒れていました。父親の体には丸いブツブツができ、息子と同じように高熱がでて、寝込んでしまいました。親子は、あちこちの医者にかかりましたがなかなか回復せず、おかげですっかり財産を使い果たしてしまいました。
このことから、村人たちは「むやみに木を傷つけたりしたら、なんじゃもんじゃ様のバチがあたる」として、これまで以上に木を大切に扱うようになりました。
その後も、なんじゃもんじゃの木は「木の神様」として大事にされたそうです。
(紅子 2013-8-28 0:47)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 東京のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 東京のむかし話(各県のむかし話),東京むかし話の会,日本標準,1975年09月25日,原題「なんじゃもんじゃの木」,再話「石橋シヅ子、横笛太郎」 |
備考 | 木は保谷の桑畑の中にあるとの事。 |
場所について | 保谷(地図は適当) |
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