昔ある所に、大変に仲の悪い嫁と姑(しゅうとめ)がいました。姑は事あるごとに嫁をいびってばかりで、嫁はというと姑の言う事を素直に聞く事はありませんでした。
そんなある時、姑がちょっとした風邪がもとで寝込んでしまいました。嫁はこれ幸いにと、かかりつけの医者に毒を盛ってもらうようにお願いしました。医者は驚きながらも、嫁の話を聞いて可哀そうに思い、言われるがまま毒薬を作って嫁に渡しました。
医者は「この薬はすぐには効かないので、姑さんのご機嫌をとりながら、根気強く飲ませ続けるように」と念を押しました。毒を作ってもらった嫁は大喜びで家に帰り、さっそく煎じて「これは良薬だから」と、姑を騙して飲ませました。
それからの嫁は、毎日々、薬を飲む事を渋る姑をやさしく励ましながら飲ませ続けました。するとある日、姑は涙を流して「こんなに優しくしてもらって私は嬉しいよ」と、今までの意地悪を嫁に謝りました。
この姑の言葉を聞いた嫁は心苦しくなり、自分がとんでもない事をしている事に気がつきました。嫁は大急ぎで医者の所へかけ込み、毒消しの薬を作ってもらうように必死で訴えました。しかし医者は「あの毒には毒消しは効かない」と説明しました。
嫁は取り返しがつかない事をしてしまったと、後悔して泣き始めました。その様子を見た医者は「実はあれは元々毒ではない、良薬だったんだよ」と、ネタばらしをしました。やがて医者の言う通り、姑の病は全快し、二人は世間がうらやむほどの仲の良い嫁と姑になりました。
(紅子 2012-11-14 2:47)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 安池正雄(未来社刊)より |
出典詳細 | 神奈川の民話(日本の民話19),安池正雄,未来社,1959年05月30日,原題「仲なおりした姑と嫁」,話者「杉山鶴吉」 |
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