昔々あるところに、朝ご飯はうめぼしをよく見て、唾が出てきたのをおかずにするというくらい、話にならないくらいの欲張りでケチな長者がいました。
ところで、この村に、ものすごくうそをつくのがうまい男がいました。ある日その男は、馬を連れて例の長者の家に行きました。
そこで男は、何を思ったか財布から金を取り出すと、連れていた馬の糞の中にいれました。そしてこの馬を「金のくそをする馬」といい、長者にをだまして売りつけました。半年後、今度は「薪なしでご飯が炊ける釜」をだまして売りつけました。
だまされて怒った長者は使用人と共に男を捕まえ、俵の中に入れて簀巻き(すまき)にして海に放り込もうとしました。しかし、いざ殺すとなるとさすがに哀れに思ったか、こんな男でも念仏をもらっといてやろうと思い、長者は近くの寺に寄りました。男はその隙に、通りかかった鰯売りを得意のうそでだまし、すり替わりました。
そうとは知らず、長者はすり替わった鯖売りを海に投げ入れ、屋敷に戻ってきました。しかし、門の前には海に投げ入れたはずの男が何食わぬ顔で座っていました。驚く長者をよそに、男は鰯売りが持っていた鰯を見せながら、長者にこう言いました「あんな浅いとこに投げられたんじゃ、鰯しか取れない。もっと深いとこなら鯛やヒラメがとれたのに」
それを聞いた長者は、鯛やヒラメ欲しさに自ら俵の中に入り、使用人に海の深いところに投げ込ませたとさ。
(投稿者: niou 投稿日時 2012-2-23 18:28 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第二集(日本の民話46),松岡利夫,未来社,1969年10月20日,原題「嘘にのる欲」,採録地「厚狭郡、豊浦郡」,話者「岡本コメノ、井上寛次」 |
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