昔、小石川の白山御殿町にお侍の一家が引っ越してきた。
このお侍は顔立ちがお稲荷様にそっくりだったので、狐が大嫌いだった。引っ越してきた屋敷の裏に、壊れかけた古いお稲荷さんの祠を見つけると奉公人に命じて祠を取り壊し、お風呂の薪にくべてしまった。それ以来、お侍の屋敷では奇怪な出来事が起こるようになった。
真っ白な狐そっくりのおばあさんが門前に座り込んだ。狐ののっぺらぼうがお侍の娘の首を絞め、お侍や奉公人が駆けつけると「ごぼう」の束になって縁の下に逃げ込んだ。キセルが勝手に煙草の火を付けて煙を吐く。庭の石灯籠が浮き上がって、屋根を突き破ってお侍の座っていた縁側に落ちた。夜中に庭の木々が炎を吐いて燃えた。
お侍は「稲荷のたたり」だという事は解っていた。腕の立つ2人の同僚に頼んで屋敷を守ってもらおうとしたが、1人は沢山の草履に全身を叩かれ、もう1人は刀で髷と着物を斬られ、屋敷を逃げ出してしまった。山伏にお祓いを頼んだが、山伏は突然現れた大きな手に掴まれ、屋敷から放り出されてしまった。
周囲の人々は「お稲荷様のお社を壊しただけでなく、風呂に薪にしたからだ。早くお稲荷様に謝るべきだ。」とお侍を責めた。お侍は「やりすぎたかな」と思ったが、このままではやられっぱなしで「しゃく」だった。そこでお侍は、近在の猟師から「狐」を買えるだけ買い集めると「狐料理」を作り、大勢の人々を招待して3日3晩どんちゃん騒ぎの大宴会を催した。
これにはお稲荷様も呆れたのか、それ以来お侍の屋敷で不思議な事は起こらなくなったという。
(投稿者: のんの 投稿日時 2012-9-22 15:20)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | クレジット不明 |
出典詳細 | 東京のむかし話(東京むかし話の会,日本標準)かもしれない |
場所について | 小石川白山御殿町(地図は適当) |
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