むかし、ある村の外れにお地蔵様が立ってござった。ある時、反物の入った大きな風呂敷包みを担いだ小僧が通りかかり、お地蔵様の前まで来ると木陰で昼寝を始めたそうな。
しばらくして小僧が目をさましてみると、風呂敷包みが無くなっておった。風呂敷包みはどこにも見当たらず、やがて小僧は大きな声で泣き始めた。その声を聞きつけて、村人が大勢集まって来た。そうして、その内、お役人達も駆け付けた。
お役人が小僧に「反物が無くなった時周りに誰かいなかったか?」と尋ねると、小僧は「誰もおらんかったが、あのお地蔵様だけは傍におった。」と答えたそうな。お役人は「それならば、犯人はお地蔵様じゃ!」とお地蔵様に縄をかけ、縛り上げてしもうた。
こうして、小僧とお地蔵様はお白州に引き出され、裁判を受けることになった。村の人々も興味深々で集まり、お白州の周りは黒山の人だかりになった。じゃが、お役人がお地蔵様をどんなに厳しく追及しても、お地蔵様は一言もしゃべりはしなかった。
何を聞いてもお地蔵様が答えないので、とうとうお役人はお地蔵様を牢屋に放り込んでしもうたそうな。それを見ていた村人達は、お地蔵様が口をきく訳がないと大笑いした。するとお役人は「裁判を見て笑ったり、野次を飛ばしたりするとは、不届き千万!罰として一人一反ずつ反物を持ってこい!」と怒ったそうじゃ。
村人達は仕方なく一人一反ずつ反物を持ってきて、お白州には反物が山のように集まった。そうして、お役人はその集まった反物の中から、盗まれた小僧の反物を探しださせたのじゃった。お役人のなかなかの名判断なのじゃった。
お地蔵様はというと、反物が盗まれるのを黙って見ているとは不届き千万、罰としてそのままにしておけということで、しばらくの間、縛られたままじゃった。こういう訳で、このお地蔵様は村人から縛られ地蔵と呼ばれたそうじゃ。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2014-1-2 21:47)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 東京むかし話の会(日本標準刊)より |
出典詳細 | 東京のむかし話(各県のむかし話),東京むかし話の会,日本標準,1975年09月25日,原題「しばられじぞう」 |
備考 | お地蔵さんは、水元の南蔵院にあるとの事。 |
場所について | しばられ地蔵(南蔵院) |
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