周防・長門の民話 第二集(未来社,1969年10月20日)に、同タイトル名のお話があり「このお話かもしれない」ということであらすじを書いてみます。
昔ある所に、大きな川を挟んで東と西に一軒の家があり、それぞれの家にお爺さんとお婆さんが暮らしていました。
東の家の二人は、大変な正直者でしたが貧乏で、子供もいないため一匹の猫を可愛がっていました。二人は、もう少しゆとりができるように毎晩お祈りしていると、ある時、お爺さんの夢の中に竜神さまが現れました。
竜神さまは「えんこう(河童)の一文銭を授けよう、これを天井裏に吊り下げて祀りなさい」とお告げになりました。翌朝、お爺さんの枕元に置かれた一文銭を、大切に天井裏に吊り下げておきました。
すると、日増しに二人の暮らしは良くなり、可愛い猫にも十分にエサを食べさせることが出来るようになりました。この事を知った、西の欲深の爺さん婆さんが、言葉巧みにえんこうの一文銭を借りて、自宅に持って帰りました。
すると、西の家でも日増しに暮らしが良くなっていきました。と同時に、東の家では日増しに貧乏になっていきました。
そこで、東の二人は貸した一文銭を返してもらうように催促しましたが、一向に返してもらえませんでした。困った二人は、飼っている猫に一文銭を取り返してくるように頼みました。
日ごろの恩返しにもなると考えた猫は、さっそく川を渡ろうとしましたが、渡れないので困っていました。偶然通りかかった犬に頼んで、背中に乗せてもらい、川を泳いで東岸まで渡してもらいました。
東の家に着いた猫は、一匹のネズミを呼び止めて、天井裏につるしてあった一文銭を持ってきてもらいました。猫はそれをくわえて、再び犬の背中に乗って川を渡り始めましたが、その途中うっかり一文銭を川の中に落としてしまいました。
ほとほと困った二匹は、空を飛んでいたトンビと、川で魚を取っていた鵜(う)と、泳いでいた鮎にお願いして、川底の一文銭を拾ってきてもらいました。
猫は、沢山の動物たちに協力してもらった事に、厚くお礼を言いました。そして猫は「猫に鼠に空たつ鳶、川にゃ鵜の鳥、鮎の魚」と、感謝の気持ちを込めて歌いました。
ところが、この歌詞には犬の事が一言も入っいなかったので、犬は「恩知らずな猫め」と随分腹を立てました。この事から、犬は猫を見れば追いかけまわすようになりました。
えんこうの一文銭を取り返した東の家では、ふたたび暮らしが良くなったそうです。
(紅子 2013-11-4 2:35)
ナレーション | 未見のため不明 |
出典 | クレジット不明 |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第二集(日本の民話46),松岡利夫,未来社,1969年10月20日,原題「えんこうの一文銭」,採録地「阿武郡」,話者「多田義男・長富徳太郎」 |
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