昔、三重県の四日市の五位鳥山(ごいどりやま)に、大きくて真っ黒な五位鳥(ごいどり)が住んでいて、麓にある日野村の人々を襲って食べていた。
そんなある日、西明寺(さいみょうじ)の和尚が祈祷をすると、家よりも大きな太鼓と鐘と法螺貝を同時にデッカンブーと鳴らせば、五位鳥を追い払える事がわかった。太鼓と鐘はなんとか作れたが、そんな大きな法螺貝はどこを探しても見つからなかった。
そこで和尚は法螺貝を探しに出かけたが、五位鳥が「どうしてそこまでする。別に逃げても構わないぞ」と話しかけてきた。五位鳥は「法螺貝の場所は教えてやるが、明日の日没までに帰って来れれば和尚を喰う。帰って来られなければ村人を喰う」と言い、場所を教えた。
和尚は一日中歩き続けて、やっとその海に着いた。和尚はお教を唱えて海に飛び込み、海の底の法螺貝に手を伸ばした。すると、不思議な事に法螺貝が光り出しとても美しい女が現れた。美女は「ここでずっと過ごして下さい」と和尚を引きとめたが、和尚は美女の誘惑を振り切り、どうにか日没前に村へ帰り着いた。
その頃五位鳥は、和尚が帰って来ないので村人を喰おうとしていた。そこへギリギリ間に合って、大きな法螺貝を持った和尚が帰って来た。和尚は「さあ早くわしを喰え、だがわしがお前の喰う最後の人間だ」と言うと、村人たちは「次はわしたちが、和尚を助ける番じゃ」と結束し、デッ(太鼓)カン(鐘)ブー(法螺貝)と鳴らし始めた。
五位鳥は、とうとう姿を消し、村には平安が戻った。和尚は疲労で腰も立たない程だったが、村人の必死の看病もあり無事に回復した。その日から、五位鳥を見た者はいなかった。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-10-26 22:15)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 三重県 |
場所について | 西明寺跡(地図は適当)日野神社の少し北にあるらしい |
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