昔ある所に、弥吉(やきち)という乱暴者の男がいました。
弥吉は、人間でも犬でも鶏でも乱暴しないと気が済まない男で、近所でも「暴れ弥吉」と呼ばれて恐れられていました。
ある暑い日、弥吉は天秤棒を担いで山に薪(たきぎ)を取りに行きました。木陰の下で休憩をしていた弥吉が、ふと目にしたお地蔵さんのきれいなよだれかけが何とも腹立たしく感じ、天秤棒で思いっきりたたいてお地蔵さんの首をへし折りました。
さらに弥吉はお地蔵さんを蹴り倒し、意気揚々とその場を立ち去りました。すると、下り坂にさしかかった辺りで、背後から巨大な石地蔵の首が地鳴りをあげて弥吉に迫ってきました。
弥吉は大急ぎで走り出し、偶然見つけた人がやっと入れそうな横穴に逃げ込みました。と同時に、石地蔵の首がまるでフタでもするように、横穴の口をふさいでしまいました。
その後、弥吉の姿を見ることはありませんでした。やがて村人たちは、お地蔵さまに新しい首を作ってあげ、お堂も建てて村の守り神として大切にお祀りしました。
(紅子 2014/4/3 3:04)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 大分の伝説(日本標準刊)より |
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