岩井という所におかねさんという怪力の女の猟師さんが住んでいて、どんなに大きないのししでも平気で担げる人でした。
ある日、村外れの空き家から毎夜「ビヨーンビヨーン」という変な音がするので村人が見に行くと、あまりの恐怖で抜け殻になって帰ってきた。猟師達が退治に行っても結果は同じで、ついにおかねさんが行く事になった。
空き家に着いたおかねさんが部屋を覗くと一人のお婆さんが糸を紡いでいる。 怪奇な音は糸を紡ぐ時の音だったのだ。おかねさんに気付いたお婆さんは、顔だけを大きく前に突き出し、目は見開き、口は耳まで裂け、牙がむき出しになった。 全身の血が逆流したおかねさんだったが肝っ魂が据わっているので動じずに中に入った。
鉄砲を構えて金具を覗くと、糸を紡いでいるお婆さんが透けて見える。試しに2発打つと何と体を通り抜けてしまう。 「これはまやかしだ」と気づいたおかねさんが、ロウソクの明かりを金具から覗くと、何とロウソクのそばで大きな古ダヌキがお婆さんと同じ服を着て糸を紡いで、横であのお婆さんが糸を紡いでいたのだ。
おかねさんは「こりゃあたまげた化かしかたじゃ」 と驚いたが、慌てずに「落ち着いて獲物を狙うんじゃ」と言ってロウソクの火めがけて鉄砲を撃った。
翌朝、村人達が空き家に行ってみると、子牛程もあるたぬきが眉間を打たれて死んでいた。 感心した人達が「どうやって退治したんじゃ?」と尋ねると「落ち着いて獲物を狙うんじゃ。ひゅうひゅう。」と言っただけだった。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 市原麟一郎(未来社刊)より |
出典詳細 | 土佐の民話 第一集(日本の民話53),市原麟一郎,未来社,1974年06月10日,原題「岩井のおかねさん」,採録地「土佐清水市」,話者「中平満州」 |
場所について | 土佐清水市下川口の岩井谷(地図は適当) |
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