No.1436
うばしみず
姥清水
高ヒット
放送回:0918-B  放送日:1994年01月22日(平成06年01月22日)
演出:小林三男  文芸:沖島勲  美術:阿部幸次  作画:江口摩吏介
福島県 ) 37170hit
息子を探して飯豊山に登った母は、石になった。

昔、みちのくは岩代の飯豊(いいで)のお山では年に一度、夏にお山参りが行われておった。男の子は13になると成人と認められ、泣くにも泣けぬ難儀なお山参りをするのじゃった。

いつの頃か、お山まいりの際に息子を神隠しにあわされ、あきらめがつかずにいた母さまがいたそうじゃ。母さまは、村人が止めるのもきかずに女人禁制のお山に登っていった。「すえ~、末吉ぃ~」幾日もかかり息を切らせながら苦労して登っていった。

やっとこさ五枚山のてっぺん近くまでたどり着き、母さまは独り言を言った。「おらの息子とっちまうなんざ神や仏のすることじゃなかんべぇ~。」それを聞いた姥権現がくぐもった声で言った。「お前の息子は岩場で足を踏み外し、谷へ落ちる途中、山びこのじいさんに呑まれたのさ。岩さぶちあたって死ぬより山びこの息子になった方が何ほどか良かんべぇ。呼ばってみろや」

母さまは呼ばってみた。「ヒョーイ、ヒョーイ」するとかなたの山から「…ヒョーイ…ヒョーイ…」と声が返ってきた。母さまは息子の声さ聞いた喜びで泣き続けた。「おらぁ息子の声が聞けるこのお山さとどまりてぇ。」 年とってやっとお山へ来たもんで、もう帰る気力がなかった。

夜が明けた頃、そこには石になった母さまが伏していた。泣いた涙は池になり、ときたま、息子がその清水を飲みにきた。神隠しにあった子たちもたくさん、母さまの情けをもらいにやってきた。冬になればお山参りの人もなく、たまには山姥が水呑みに降りてくるくらいで、山びこの息子もみんな、静かにゆっくり休むんだと。

(投稿者: もげお 投稿日時 2012-3-18 15:34 )


参考URL(1)
http://www.o-minwa.net/siseki_densetu/49_02kitakata_mesitoyo/49_02kitakata_mesitoyo.html
参考URL(2)
http://home.r01.itscom.net/yukkuri/yamayuki/iidesan100809/iidesan100809.html#ちょっとウンチク
ナレーション市原&常田
出典福島の伝説(角川書店刊)より
出典詳細福島の伝説(日本の伝説45),竹内智恵子,角川書店,1980年4年20日,原題「姥清水」
場所について姥権現(母親が石になったという姥権現)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このページを印刷
地図:姥権現(母親が石になったという姥権現)
追加情報
このお話の評価8.4545 8.45 (投票数 11) ⇒投票する
※掲載情報は 2012/3/18 18:14 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
お話の移動 ( 47  件):   <前  1 ..  41  42  43  44  45  46  47  次>  
コメント一覧
9件表示 (全9件)
もまさん  投稿日時 2021/7/27 22:34
リアルタイムで見ていて、とても切なく悲しく、美しいお話で、好きでした。
当時、息子が母親のことを忘れてしまっていることが悲しくて仕方なかったのですが、今見返すと、他の子を押しのけて自分が母親の石にスリスリしてるんですね。
忘れていても何かしら感じているのかもしれないなと思うと、少しだけ救いがあるように思いました。
はむこ  投稿日時 2019/9/26 17:02
どうなるのかな?と思い読み進めてますので、最初にオチがわかってしまうと少しだけ残念です。^^;
ゲスト  投稿日時 2019/4/6 12:24
息子をもつ身として、母親の気持ちがよく分かる。描写も音楽も語りも全部が幻想的で美しい物語です。
夾竹桃  投稿日時 2018/6/24 17:29
山を登る男の子たちが唱えている言葉は、「六根清浄」でしょうか?
六根とは、人間に具わっている感覚-
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・意識
のことで、
清浄とは、執着を断ち、心を清らかにするということです。
自分の中に不浄なものを取り込まないように、俗世との接触を断つ方法のひとつが山ごもりなのだそうです。

信仰と母親の心が対峙する。
静かだけど凄まじいですね。

横浜さぶ  投稿日時 2015/1/17 10:05
これは実際にTVで観て泣きました。
悲しい、そして美しい映像で、いまだに心の奥に刺さっています。
母様の愛情が憎悪に変わる描写や、たくさんの散っていった子供らの魂の描写が絶品です。
なおさん  投稿日時 2012/9/1 14:26
切ないですがいいお話ですね。心に残ります。
昔ばなしファン  投稿日時 2012/5/6 12:43
大好きな作品です。
語りは市原さん~常田さん~市原さん、とお二人が担当されていると思います。
もげお  投稿日時 2012/3/20 11:37
>地図はなんだか飯豊山からずれているようですが、ここでOKでしたか?

そこでOKです。母親が石になったという姥権現の位置にしています。
一行あらすじに直して頂いてありがとうございます。
beniko  投稿日時 2012/3/18 18:17 | 最終変更
あらすじ投稿ありがとうございました、さっそく転記しました。
●地図はなんだか飯豊山からずれているようですが、ここでOKでしたか?
要約文は、一行あらすじ(ログライン)用として変更したうえで転記しました。勝手に変更すいません、よろしくお願いいたします。
投稿ツリー
9件表示 (全9件)
現地関連情報
出典本調査 facebook
Twitter

オンライン状況

47 人のユーザが現在オンラインです。 (36 人のユーザが お話データベース を参照しています。)

新着コメント(コメント24件)