ある時、竜宮の姫さまが重い病にかかりました。
魚たちは相談して、病気に効くという「山の神様の桃」を取りに行く事になりました。しかし、魚たちは山の神さまが怖いので、誰も名のり出る者はいませんでした。そこで、醜い顔のオコゼをこの時とばかりにおだてて、山の神さまのところへ桃を取りに行かせました。
オコゼから姫さまの事を聞いた山の神さまは「竜宮の姫さまを嫁にくれれば、桃をひとつあげても良い」と、取引を持ちかけました。オコゼは仕方なく姫さまとの仲人の約束をして、桃をもらって逃げるように竜宮へ帰っていきました。
この桃を食べた姫さまは、すっかり病気が治り元気になりましたが、山の神さまの桃の力により妊娠してしまいました。どんどん膨れるお腹に気がついた両親はカンカンに怒り、姫を竜宮から追い出してしまいました。
仕方なく姫さまとオコゼは、身重な体で山の神のところへ行き、そこで出産する事にしました。やがて姫さまは産気づき、三日三晩かけてなんと404人もの子供を産みました。出産のお世話をしていたオコゼが、子供の足に触るとオコゼのとげの毒で足が悪くなり、腹に触ると腹が悪くなり、頭に触ると頭が悪い子どもになりました。
最初は喜んでいた山の神でしたが、あまりの子供の多さにほとほと嫌になって、子供たちを追い出してしまいました。あちこちに飛び散った子供たちのおかげで、人間界に404の病が始まることになりました。
こんな事があって、山奥に引っ込んでしまった山の神は、女人が山へ来るとたちまち機嫌が悪くなるようになりましたとさ。
(紅子 2012-7-31 0:14)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 辺見じゅん(角川書店刊)より |
出典詳細 | 神々の物語(日本の民話03),辺見じゅん=清水真弓,角川書店,1973年10年25日,原題「山の神とおこぜ」,伝承地「四国地方」 |
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