昔、福岡の足立山の近くに、大きな二つの池がありました。池の近くには、お三という女ギツネと4匹の子狐が住んでいました。
ある日の夕方、馬方の甚べえがこの近くを通りかかると、偶然お三が若い娘に化けるところを目撃しました。あまりに美しい娘に化けたので、甚べえは思わず「オラと一緒に町に出かけよう」と声をかけました。
急に人間から声をかけられ、最初は恐がっていたお三でしたが、熱心に口説かれているうちに、またウマい物も食べられると考え、一緒に町へ出かける事にしました。
二人は飯屋で御馳走と酒をたいらげ、やがてお三は酔いがまわってきました。甚べえは頃合いを見計らい、一人でそっと飯屋から抜け出しました。そうとも知らないお三は、すっかり酔いつぶれ、立派なしっぽを飛び出したまま寝込んでいました。
しばらくして様子を見に来た飯屋の主人が、眠っている娘はキツネが化けたものと気が付き、ほうきでお三をめった打ちにしました。お三は命からがら、子狐たちがいる巣へ逃げ帰っていきました。
翌日、傷だらけになったお三を、子狐たちが理由もわからず必死に介抱していました。そこへ、昨夜の事を反省した甚べえが、お詫びにと美味しい酒まんじゅうを持ってやってきました。
子狐たちは大喜びで酒まんじゅうを食べようとしましたが、お三は「その饅頭は馬の糞かもしれないから食べてはだめだ」と制止しました。※人を化かすキツネが、逆に人に化かされないよう警戒したのは、後にも先にもこの甚べえだけでしょう。
(紅子 2012-10-18 22:09)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 福岡の伝説(日本標準刊)より |
場所について | 北九州市の大谷池(お三と子ぎつねが近くに住んでいた) |
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