昔ある山里に、塩を売り歩く商人が居た。
商人は常々、海から山までの往復という苦労の割には儲けが少ない事を嘆いていた。ある日、商人は山の中で塩を見つけて喜んだが、舐めてみるとそれは塩ではなく石灰だった。
ところが商人は、何を思ったかその石灰を粉々に踏み砕き、塩の空き袋に詰めると、連れていた牛の背中に乗せた。そして翌日になって五十辺(いからべ)の村に入ると、これを塩と偽って売り始めた。村人たちは、久しぶりの塩売りということでこぞって塩を買い求め、商人の持ってきた似せ塩を全て買いあげた。
さて、塩売りが帰った後。ある村人が、漬物を作ろうと糠(ぬか)が入った樽に塩を入れると、糠がカチンカチンに固まった。またある村人が焼き魚に塩をふりかけると、魚も石になった。村人が怒って塩を川に投げ入れると、これまた川の水が石のように固まってしまった。
「塩売りを捕まえろ!」と、村人総出で塩売りを追いかけた。一方塩売りは大儲けした銭を抱えて山道を歩いていたが、追ってきた村人達に気づくと大あわてで逃げ出した。そして山の中に分け入り、白山神社の鳥居の前にやってきた。すると不思議なことに、神社の鳥居から不思議な光が発せられ、その光を浴びた塩売りと牛は、だんだん体が動かなくなっていった。
しばらくしてから追いついた村人達が見た物は、神社の鳥居の前で寄り添うようにして石となってしまった塩売りと牛の姿だった。この石は、今も五十辺の奥の山道にあり、塩売り石と呼ばれている。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 富山県 |
場所について | 高岡市江道667 (塩売り石の場所) |
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