昔、越後のある村に、だほ者(怠け者)の作治という男が母親と一緒に暮らしていました。
作治は、働くどころか体を動かすことも面倒くさがり、飯を食うのも母親に口まで運んでもらう有様でした。ある時、母親から「たまには畑の草取りでも行って来い」と言われ、弁当を持たされて家から押し出されました。
作治はしぶしぶ畑に向かって歩いていると、腹が減ってきました。しかし、弁当を取り出して自分で食べるのが面倒でした。歩いている途中に誰かに出会ったら、弁当包みを開けてもらって食べさせてもらおうと考えながら、トボトボ歩き続けました。
すると、大口を開けて歩いてくる若者と出会いました。この若者も大変なものぐさ者で、頭にかぶった笠のあごひもがほどけそうになったので、笠が落ちないように大口を開けたまま歩いていました。
作治は、弁当を食べさせてもらう事もできず、さらに歩き続けました。すると今度は、頭を下げたまま歩いてくる男に出会いました。男は、ももひきの腰ひもがゆるんだので、脱げないように口で紐をくわえたまま歩いていました。
作治は、結局誰からも弁当を食べさせてもらえず、お腹ペコペコのまま畑に到着しました。力なく畑の桑の木の下で寝転ぶと、おいしい桑の実が作治の口の中に落ちてきました。
作治は「体を動かしたので、うまいものが口に入った」と喜び、弁当も自分で食べました。それからの作治は働く喜びを覚え、もう誰も作治の事をだほ者と言わなくなりました。
(紅子 2013-10-27 10:07)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 新潟県 |
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