昔、旅のお坊さんが海の近くを通りかかると、海の中からタコが「おらを弟子にして下さい」と話しかけてきた。そこでお坊さんは、タコを連れて旅を続けることにした。
そのうち日も暮れて、すっかり道に迷ってしまったお坊さんは、一晩の宿を頼むため一軒の家に立ち寄った。家の主人は苦虫を噛み潰したような顔の男で、お坊さんがうまそうなタコを連れている事を知ると家の中に招き入れた。
お坊さんが薬師様にお経をあげている間、男は熱い風呂を用意し、嫌がるタコを投げ込もうとした。お経をあげながら様子をうかがっていたお坊さんの「喝!」という声に驚いた男のスキをついて、タコはどうにか熱湯風呂から逃れることができた。翌朝になると、お坊さんとタコは無事に男の家から出発した。
男はゆでダコを食いそびれ、「惜しい事をしたなぁ」とブツブツ言いながら風呂に入っていた。すると突然、湯船の中から謎のタコが現れて男にがっちり吸いついた。この謎のタコは、夕べお坊さんがお経をあげていたお薬師様で、悪い心を吸い取るために現れたのだ。
薬師様に悪い心を吸いとってもらった男は、すっかり心の優しい男になった。そしてお坊さんとタコの旅は、まだまだ続いた。
(紅子 2011-11-19 0:58)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 新潟県 |
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