昔、ある所にものすごく貧乏な若夫婦が住んでいました。明日は正月というのに、粗末な食べ物もついには底をつき、夫婦は一人分の芋粥を譲り合っていました。
あまりの貧乏に情けなくなった男は「いっそ狼にでも食われてしまいたい」と、山の中へ入っていきました。すると、罠にはまって怪我して動けなくなっている一匹の狼に出くわしました。男は狼を罠から外してやり、血止めの為に手ぬぐいで足を縛ってあげました。
結局、男は狼に食われる事すらままならず、トボトボと山の中を歩いていると、一軒の見慣れない人家を見つけました。ふらりと立ち寄ると、老人が一人で座っていて、男はこれまでの貧乏話を切々と話して聞かせました。
すると老人は、男に褌(ふんどし)で目隠しをさせ、手を引いてどこかへ連れだしました。男は老人に言われるがまま、手探りでどこかの戸をあけ階段を登り、何かの箱の中から何かをつかみだして懐へ入れました。しばらくして男がようやく褌を外してみると、そこはいつの間にか自分の家の中でした。
不思議な事に、男の懐には沢山の小判が入っていました。助けた狼の恩返しなんだろうか、とにかく男は村一番の長者になりました。
(紅子 2011-12-31 4:43)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 辺見じゅん(角川書店刊)より |
出典詳細 | 土着の信仰(日本の民話06),辺見じゅん=清水真弓,角川書店,1973年9年25日,原題「爺さまとおおかみ」,伝承地「四国地方」 |
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