昔、ある所に源助というじいさんが、ばあさんと住んでおった。
源助は、ばあさんがいつも作る大根めしが嫌いだったので、大根が切れないようにと、包丁をゴミ壺の中に隠してしまった。ばあさんは、包丁が無いと大騒ぎ。そこで源助が「わしの、よくきく鼻で探してやる。」と言ってクンクンと嗅ぎまわった。
源助が包丁を見つけると、ばあさんは大喜びして「わしの所のじいさんの鼻は天下一じゃ。」などと、村の者に言いまわった。そして、ついにその噂は京都の御所まで届いた。ちょうどの時、御所では大切な黄金の茶釜が無くなったと大騒ぎだったので、早速源助のもとに使いを出した。
源助は、籠に乗せられて御所へと連れていかれる。今更あの話はウソだとは言えず、弱った源助は途中で逃げようと思い、小便をしたいと言って籠から下りた。籠から下りた源助が林の中に逃げ込むと、隠れるのにちょうどいい御堂がある。源助はこのお堂の下に隠れることにした。
源助がお堂の下に隠れていると、何やら上が騒がしい。下から覗いてみると、三匹の狐がこんなことを言っていた。「御所から盗み出した黄金の茶釜は、京のはずれの大きな楠の木の下にある。」源助は、それを聞くなりすぐに籠の所に戻った。
御所に着くとすぐに黄金の茶釜の捜索が始まった。源助は、狐が話していた都のはずれにあるという楠を探して、京の北、東、南と探し回ったが、大きな楠は見当たらない。そこで4日目に西の方へ行くことにした。すると、あった、あった、大きな楠の木が。すぐに家来たちに掘らせると、掘った所から金ぴかに光る黄金の茶釜が出てきた。
こうして、源助は褒美をたくさん貰い、もう二度と会えないと思っていたばあさんの所に帰って来ることができた。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-10-8 10:14)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 広島の昔ばなし(三丘社刊)より |
出典詳細 | 里の語りべ聞き書き 第09巻,川内彩友美,三丘社,1990年06月01日,原題「鼻きき源助」,話者「白根英之」 |
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