昔、ある国では、年寄りを山に捨てさせる掟があった。なんでも、年寄りは国の役に立たないという理由で、皆六十一歳で山に行くことになっていた。
そんな国の片田舎に、おっかあと息子が住んでいた。おっかあは生来元気であったが、明日にはとうとう六十一歳を迎え、うばすて山に行かねばならなかった。
息子は仕方なく、翌朝早くにおっかあを背負子(しょいこ)に乗せると、重い足取りでうばすて山に向った。
やがて山もだんだん深くなり、うばすて山が近づいた時、息子の背後から「パキッ、パキッ」と枝を折る音が聞こえてくる。おっかあは、息子が帰り道で迷わないように、道しるべに枝を折っていると言うのだ。これを聞いた息子は、おっかあの親心を感じ、胸がいっぱいになった。そして、おっかあを背負ったまま一目散に山を下りた。どんなお咎めを受けても、おっかあを養う覚悟を決めたのだ。
さて、それからしばらくして、隣の大国の殿様がこの国の殿様に難題を出してきた。そしてこの難題に答えられなければ、この国を攻め落とすと言うのだ。その難題とは「灰で縄をなえ」というものだった。息子はこの話を床下にかくまったおっかあにした。するとおっかあは、縄を塩水につけてから乾かし、それを戸板の上で燃やせと言う。
息子は早速これを殿様に進言した。しかし隣国の殿様は、なおも第二、第三の難題を出してくる。第二の難問は「七節曲がった竹の穴に糸を通せ」、そして第三の難問は「打たずに鳴る太鼓を作れ」というものだ。すると、おっかあはこれらの難問も見事に解いて見せた。第二の難問の答えは、竹の穴の片方に蜜を付け、もう片方の穴から糸を巻きつけた蟻を入れる。そして第三の難問の答えは、太鼓の中にクマンバチの大群を入れるというものだった。
これらの答えが、全て年老いた母親によるものと知った殿様は、年寄りの知恵に感心してこれまでの考えを改めた。そして、うばすての風習は無くなり、人々は年寄りをいたわり幸せに暮らせるようになった。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2014/9/23 18:31)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | (表記なし) |
備考 | 出典元不明ですが、初期版のリメイク版である点をふまえ「越後」としています。 |
VHS情報 | VHS-BOX第3集(VHS第21巻) |
場所について | 姨捨山(おばすてやま・うばすてやま)長野県の同名の山、関連不明。 |
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