むかし、三重県の波切(なぎり)という漁村の沖に大王島(だいおうじま)という島がありました。その大王島には『だんだらぼっち』という一つ目の大男が住んでいました。だんだらぼっちは島から海を一跨ぎして村へやってきては、魚や米俵をごっそり持って行ってしまうのでした。
村人達が追い払おうとすると、だんだらぼっちは怒って大暴れし、畑や家をめちゃくちゃにしてしまうのでした。困り果てた村人達は、だんだらぼっちを追い払うために、一平という男の子の考えた作戦をやってみることにしました。
そしてある晴れた春の日、いつものようにだんだらぼっちが波切の村へやってきました。すると、道の途中に周りが十間もある大きな竹籠が置いてありました。だんだらぼっちが不思議がっていると、「それは昨日の夜やって来た千人力の大男の煙草入れじゃ。」と、一平が現れて告げました。
だんだらぼっちが驚いて歩いて行くと、今度はコマセ袋という太さが一抱え半、長さが五間もある大きな魚の網が干してありました。「これは千人力の男の股引じゃ。あいつの力や大きさには、お前なんか敵わねえ。」と、また一平が現れます。
だんだらぼっちがびくびくしながら歩いて行くと、今度は魚をとる網がいくつもつなぎあわされて竿で高々と干されているのでした。「これは千人力の男の着物じゃ。あいつは人間より大きい奴がいたら毬のように放り投げて遊びてえって言っておったぞ。」と、またまた一平が現れます。
だんだらぼっちが恐ろしくなって逃げ出すと、目の前に村人達が畳十枚ほどの大きな草鞋を引き出しました。「千人力の男の履き物じゃ!あいつはもうすぐここに来る!」と、村人達が叫びます。
それを聞いただんだらぼっちは、とうとう大慌てで大王島に逃げ帰って行きました。こうして一平の知恵で、だんだらぼっちは二度と波切の村にやってこなくなり、その後、姿を見た者は誰もいなかったということです。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/3/9 23:28)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | (表記なし) |
VHS情報 | VHS-BOX第3集(VHS第22巻) |
場所について | 三重県志摩市大王町の波切(なぎり)神社 |
このお話の評価 | 9.67 (投票数 3) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧